第八夜 余燼

自分は一体何を読まされているのか、と思われただろう。

私もこの話を提供していただいた時は、全く同じ心持ちであった。

『あ、ありのままに今起こったことを言うぜ。おれは怪談を聞いていると思っていたら、いつのまにか猥談を聞かされていた。な、何を言っているか分からねぇだろうが...』

色々と差し障りがあるため皆まで書くことはしないが、正にこの状況である。


ちなみに、本話はサイトの利用規約に則り、公序良俗に反しないギリギリの線を狙って表現を選択している。

それでも、実際に口頭で聞かせて頂いた内容から20倍希釈ほどに薄まっている。

要するに、元々はとてもこちらに書き記すことの許されないストレートな猥談であったのだ。

万が一運営よりお叱りがあった場合、本話は速やかに削除の上、お蔵入りとする所存である。


端的に話すならば『一夜を共にした男性が目の前でかき消えた』というだけの話を冗長に書き殴った駄文を、最後まで読了頂いた諸兄には感謝の念を抱かずにはいられない。

鼻で嗤っていただければ僥倖というものである。


さて、少しばかりの考察を。

近年において、時間超越を題材とした作品は浜の真砂の如く溢れ、また様々な様相を呈している。

肉体ごと時間を超越して移動する現象のうち、意図的なものをタイムトラベル、意図せずに移動してしまった場合をタイムスリップと呼ぶのだそうだ。

これらは移動した先の時間にも自分が存在する可能性があり、二人の自分が顔を合わせるとタイムパラドクスにより様々な弊害が起こる。時には世界が崩壊したりする。


対して、知識や記憶を維持したまま、意識だけが過去や未来の自分に移る現象はタイムリープと呼ぶのだそうで、何らかの目的を達成するために意図的に時間を遡るケースや、何らかの条件を満たすまで固定された時間の範囲内を永久に繰り返す事を強要されるタイムループなどの別がある。

本話におけるユウキ氏は、タイムリープを意図的に行う事のできる、タイムリーパーなのではないか、と云うのが率直な感想である。


そうであるとするならば、ユウキ氏は何らかの目的を持って洋子さんに接触してきた、と考えるのが妥当なように思える。

更に言えば、その目的は達成されぬまま再び次のリープのトリガーが引かれたのではなかろうか。

彼が消失した切っ掛けを鑑みるに、恐らくタイムリーパーである事を他者に看破されてはならない制約があり、看破された場合は振り出しに戻ってやり直し、もしくは即Game overというパターンも考えられる。


何れにせよ、彼が何の目的を持って現れたのかが焦点であろう。

その目的がユウキ氏個人の不幸な未来を回避する事であるならば、ミッション失敗となったとてご愁傷様というだけの話であるけれども、洋子さんの不幸な未来を回避させる事が目的となった場合、途端に洋子さんの身を案じる事になる。

タイムリープ物においては、目的を達成し損ねた主人公を追ってカメラもリープする為、失敗後の世界の続きは語られることが少ない。

しかしながら、今我々が存在する世界はユウキ氏がミッションに失敗し、何処かに消え去った後の世界、である。

彼がタイムリープを繰り返していた目的が、『人類の滅亡を回避する事』ではないことを切に願うばかりである。


徹頭徹尾どうでもよい話で恐縮であるが、日々浴びるように怪談を集めていると時折、無性にこの手の話を垂れ流したくなる。

それも人の性であるとか何とか、適当にそれらしい理由をつけて、致し方ないものとしてご容赦いただければ幸いである。

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