第一夜 余燼

あり得ないものが鏡に映る、怪談のエピソードとして最早定番と言って差し支えないだろう。

この話にて語られた二人の若者がその後どのような人生を歩んでいるのか、N氏宅のバスタブには何が潜んでいたのか、今となっては知る術もない。


あるいは、N氏が目にした現象はK氏の歪んだ笑顔と同じく、自らの肉体が限界を迎えつつある事を知らせる『肉体から精神へのメッセージ』だったのかも知れない。

あるいは、N氏宅のバスタブに潜んでいた何かこそが、N氏の人生の歯車を狂わせていた元凶だったかも知れない。

あるいは、あるいは...


いずれ真相なぞ知り得る由もなし、怪異の真は常に藪の中、である。

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