第7話 なんとかなる

 一息つくと呼吸の乱れも落ち着いたので、改めて今後のことを考えながら歩みだす。


 僕はセトレア聖国から追放された身なので、これからはミルド共生国で暮らすことになる。まずは生活拠点を見つける必要があるのだが、ミルド共生国は他国と交流を行っていない。そのため聖セトレア学園に通っていても、多種族が共生している程度の知識しかなく、どの方向へ進めば良いのか判らない。とりあえず周りを見渡せる高い場所を目指した。


 1時間ほど歩くと小高い丘があったので頂上へ向かい、周りの景色を眺めながら集落を探してみた。


(ん? アレは?)


 かなり離れているために、ボンヤリとしか見えないけど、柵に囲まれている集落のようなものが視界に入った。他にそれっぽい所はないので、集落であることを願いながら歩みだす。


(どうか集落でありますように)


 セトレア聖国から追放され、今の僕はドン底状態なはずだから、これ以上悪いことが起こる訳がないと思い、気楽な気分で「なんとかなるさ」と思うように心がけた。


 数時間ほど歩き続けると、集落らしき場所がハッキリと見えてきた。セトレア聖国では考えられないほど造りは質素だけど、外部からの侵入を防ぐための防護柵で間違いなかった。


「うん、かなり寂れているけど集落に間違いはなさそうだ。やはりドン底に落ちればあとは上がっていくだけ、案外なんとかなるもんだね。入り口は何処にあるのかな?」


 ようやく集落にたどり着いたと思い、入り口を目指して柵に沿って歩を進める。木の板でできた質素な柵は、防護柵として機能しているのか? なんて疑問に思っていると、集落に入る門らしきものが見えてきた。柵と比べると多少はマシという程度のもので、そこを大柄な2人の獣族アニュマが立っていた。


(うわっ、でけぇ~! いきなり殴りかかってこないよな?)


 初めて見る獣族アニュマに内心ヒヤヒヤしながら門を通り抜けようとすると、2人は大槍を交差させて行く手を阻んで声をかけてきた。


「おい、人族ヒューマが何用だ?」

「えっと、僕は異端者としてセトレア聖国から追放されまして……、まぁ簡単に言えばはぐれ人族ヒューマになるのかな? そんな訳で住む場所を探しているんですよ」


 愛想笑いをしながら、自虐気味に身の上話をしてから、両手の甲に刻まれた五芒星の刻印を見せると、2人の表情が変わった。


「それは異端者の刻印だな。よくあの崖から突き落とされ、激流の中を生き抜いたな。大変な思いをしたお前を我々は歓迎するぞ」

「ありがとうございます。あっ、僕は完璧な丸腰状態で、身分証やお金などを持ってないんですが……」

「がははっ、追放されたんだ当たり前のことだろ! ここはジャンガリって村だ。住民全員で力を合わせて生活していから、金なんてものは不要だ。ここで暮らすなら仕事を紹介するぜ! 俺はガウスでアイツはベリガンだ」

「ガウスさんにベリガンさんですね。僕はルパート、よろしくお願いします」


 強面の2人だけど話すととても感じの良い人で、他の村民もこんな感じなら、ここでの生活はなんとかなると思ったのだった。


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