二色の麻婆豆腐

 とある中華街に行った時の話。

 友人から麻婆豆腐を食べたら美味しかったと言われたので私は赴いていた。

 そして早速だがあまりにもマヌケな問題があった。


 その食べた店を聞いていなかったのである。


 小学生でももう少し考えていると思える程にに、何も考えずに私は街へ繰り出していた。


 とはいえまあ、麻婆豆腐は大抵の店でやっているし、ハズレを引くということもないだろう。

 そんな呑気な考えで私はブラブラと歩いていく。


 そして私は1つの看板に目を引かれた。


「二色の麻婆豆腐……」


 その看板には通常の色をした麻婆豆腐の隣に緑色の麻婆豆腐の写真が貼られてあった。


 私は一気に興味をそそられ、ええいままよと言わんばかりに店へと入る。


 その店は中か特有のなんだか格式が高そうな店の雰囲気があり、入った瞬間おひとり様でいいのだろうかと不安になってしまった。


「いらっしゃいませ」

「1名で」

「こちらのお席にどうぞ」


 店内が空いているという理由もあるのだろうが、私の不安などなんのそのと4人がけのテーブル席へと案内される。

 いいのかここで……。まぁ店員さんが案内したんだ。いいんだろう。

 そうやってある種の開き直りをしながら私はそのまま二色の麻婆豆腐定食を注文する。




「お待たせいたしました」


 しばらくして、麻婆豆腐定食が私の前へと運ばれる。

 写真の通り勾玉のような器に乗せられ、片方は通常の麻婆豆腐、もう片方は緑色の麻婆豆腐に分けられている。

 あとは白米とスープと漬物だ。漬物は多分ザーサイだろう。


 まぁとりあえずいただくとしよう。


「いただきます」


 まずは普通の麻婆豆腐から。






 美味い! 辛い!

 四川風……というのだろうか? ピリリとした風味と辛さが旨さと共に鼻を突き抜ける。

 ご飯とやはり合うんだよな。中華というのは何故こうも白米と合うものが多いのか……味付けが絶妙にマッチさせるのが上手すぎる。

 この店はご飯がおかわり自由なため、足りない足りないと嘆くこともない。


 では緑色の方へといこう。






 美味い! て言うかこっちはさらに風味が強いな!

 おそらく山椒だろうか。色からしてその可能性は感じていたがかなり山椒の風味が強い気がする。それとも中華だし花椒ホアジャオかな。違いがわからない馬鹿舌なため、グルメ漫画のように材料を言い当てることなどできはしない。

 それはさておき、ともかく風味が強い。

 四川風もそれなりに風味が強いものだと思っていたがそれを上回ってくるとは……。これはこれで美味しくもある。


 辛さによって額からにじみ出る汗を拭いながら、私はご飯をおかわりししつつ二色の味を持つ麻婆豆腐を堪能していった。




「ご馳走様でした」


 最後に出てきた杏仁豆腐で舌を落ち着かせた後、私は手を合わせる。

 余談だがこの杏仁豆腐は上にみかんゼリーが乗っており、その形が金魚の形をしていた。

 こういうのをなんというのだろう。遊び心? 最後までサービス精神があって大変嬉しく思う。


 満足した私は会計を済まし、店を出る。

 二色の麻婆豆腐か……。

 中華料理には大まかにわけて北京、四川、上海、広東などがあるが……あの緑の麻婆豆腐は何処に属するのだろう……。

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