春の記憶と、赤いリボンの君へ

@mitsuyama_keiji

第1話 目覚めたら、めんどい君がいた

見たことがあるような風景だった。


 淡く染まった空は、まるで少女の赤いリボンを映しているかのように、ほんのりと赤く染まっていた。


 小さな男の子が、泣きながら少女の手をぎゅっと握っていた。


 初めて会ったはずなのに、どこか懐かしいその笑顔。


 男の子は、自然とその少女に身を委ねていた。


 少女はずっと微笑んでいたけれど――その笑顔は、どこか震えているようだった。


 どうしてそんな表情を浮かべていたのだろう?


 彼女は誰なのだろう?


 問いかけたい言葉を飲み込みながら、男の子はその小さな背中を追いかけた。


 しばらくして遠くに母親の姿が見えると、男の子は駆け出した。


――そしてふと、振り返ったその時。少女はもう、遠く離れた場所に立っていた。


「また明日!」


 叫んだその声に、少女は突然涙をこぼしながらも、なんとか笑顔を作って答えた。


『きっと、また会えるよ』





「起きなさい。いくら休みでも、クマだってそんなに寝ていないわ。」


 彼女の声で目を覚ました。部屋はまだ冷たい空気が漂っていて、窓の外からは雪の結晶が静かに舞い落ちている。布団の中で体を動かすと、頭がズキズキして目もなかなか開かない。


「昼ご飯一緒に食べるって約束したよね?忘れちゃったの?」


 彼女は笑いながら、私を見つめて問いかけた。温かく、心地よい雰囲気の彼女の顔を見て、私はほっと一息つき軽く微笑みを浮かべた。


「今、何時?」


「もう10時半。」


 彼女は俺に携帯の画面を見せながら言った。


「まだ10時半?」


 俺は再び厚い布団を顔まで引き寄せながら答えた。


「言っておくけど、「もう」10時半よ。これ以上寝てたら、今日一日を無駄にしちゃうわよ?」


 彼女は冗談交じりに言いながら、もう一度布団を引っぺがした。俺は少しずつ体を起こし始めた。まだ疲れた体と頭。しかし彼女の言葉が俺を少しずつ現実に引き戻してくれた。


「でも、どうやって家に入ったの?」


 シャワーを浴び、少しずつ目が覚めてきた俺は困惑した表情で彼女に尋ねた。


「どうやって入ったかって?」


 彼女は呆れたように言った。


「LINEも見ないから電話したんだけど、中野先生が寒いから中に入っていなさいって言ってくれたのよ。」


「うちのお母さん、本当に…言ってくれればいいのに。」


 俺は不満をこぼしながら、苦笑いを浮かべた。


「私が言わないように頼んだんでしょ?先生と私は、秘密の連合だから。」


 彼女は冗談めかして、俺を見ながら言った。


「お母さんとそんなに仲良しなの?」


 俺は腕を組んで言い返した。「秘密の連合」なんて…彼女が嬉しそうに自慢している表情を見て、俺は笑いをこらえるのが精一杯だった。


「それは違うけどね。」


 彼女は肩をすくめて、明るく笑った。少し遊び心を感じさせる眼差しがきらりと光った。


「先生が誕生日だから、楽しんで来てって言ってたの。それで堂々と入ったわけ。完璧な誕生日プレゼントだと思わない?」


 冗談は冗談として受け止めるべきだろう。俺は首を左右に振りながら、わざと探すふりをして言った。


「どこ?見当たらないけど?」


「…マジで死にたいの?」


 彼女は冗談交じりに目を細め、唇をすぼめた。彼女の手が少しずつ上がると、俺は手をバタつかせながら必死で叫んだ。


「うわ!降参、降参!わかったから、やめて!」


 彼女は嬉しそうに笑いながら、ドアの方に向かって歩き始めた。途中で振り返り、ニヤリと笑って言った。


「前で待ってるから、早く準備して出てきて。」


 了解したように頷くと、ようやくドアを閉めて出て行った彼女。朝から散々な目にあった俺は、少し目を閉じてため息をついた。


‘…また叶奈のペースに巻き込まれたな。’

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