引き揚げ

 戦闘終了から20分後、周囲に脅威がないことを確認した艦隊は戦果の報告用にモンスターの死骸の引き揚げ作業に取り掛かる。

 戦艦から発進した小型舟艇を墜落地点に向かわせる。

「おい、見ろよ」

 搭乗員が墜落地点を指さす。

 そこには黒焦げのレオネスが体半分海面から浮いている。

 普段ならば艦砲の威力で木っ端微塵になるか、海底に沈むのだが、浅い場所に堕ちた為に沈むことなく四肢もしっかりと残っている。

「これは回収に骨が折れそうだな」

 目の前の巨体に船長がぼやくと、旗艦に電信を発して状況を報告。

 喫水の浅い場所に向けて2隻の巡洋艦を向かわせる。

 数百キログラムのあるモンスターを艦尾に備えられたアンカーを射出してレオネスに撃ち込むと、旗艦まで牽引してレガリアのクレーンを使って後部甲板に引き上げる。


「驚いたな、まさかここまで残っているとは」

 引き揚げられたモンスターの間近でそう驚くエル提督。

 艦隊司令官として幾多ものモンスターを打ち倒してきた彼女ではあるが、ここまで全身が残っている状態で艦に揚げられたのは初めてらしい。

 レオネス自体は焼夷弾による炎上で全身が焼けており、大部分の外殻が素材としては使えないが、戦果の報告と食肉としては充分である。

「アイリーン、このモンスターとの戦闘記録を作成しろ」

「は!」

 艦長であるイスリーの命令に姿勢を正して応えると、部屋に戻って戦闘記録を作成する。

 カタカタというタイプライターの音が部屋に響く。

 討伐したモンスターとその数、司令官の名前と参加した艦艇の情報などを事細かに記録。

 作成された記録は第一海軍の司令長官であるパーシズの下に提出され、資料室に収められる。

 記録書に記される、艦砲射撃でモンスターを討伐したという、第一海軍にとってのいつも通りの日常。

「ふう」

 記録の作成を一通り終えると、書類を抱えて艦長の元へと向かう。

 レオネスを背にしたイスリー艦長に手渡す。

「艦長、戦闘記録です」

「ご苦労」

 それだけを言うと、記録書を確認。

 エル提督に提出する。

「相変わらず見事な記録だな」

「恐縮です」

 ペラペラと書類をめくるエル提督。

 彼女の戦歴を裏付ける無数の勲章が陽光に煌めく。

「ガロン、輸送艦の派遣を要請は?」

「すでに完了しております」

 エル提督にそう応えるガロン副提督。

 20代の見た目ではあるが、人間の倍の時を生きる人狼族の出自で提督と同期でもあり、水色の様な毛色も相まってクールな印象だ。

「よろしい、尉官以下は作業着に着替えたのち、解体作業に取り掛かれ。

 夜までに済ませろ」

「了解です」

 提督の指示を承諾。

 エル提督の監督の下、大型モンスターを輸送船に載せるために解体と保存作業を行うことになった。

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