第23話 微睡みの中で、悲しむ姿

帰り道の車内はとても静かで、その静けさに誘われるように世はうとうとと微睡んでいた。

その内に車窓を外側から雨粒が叩き始める。天気予報が当たった。

雨音は体内の血液が流れるような音に似ていて、安心する。まるで胎内にいた頃の記憶を呼び覚まされるようだった。

遠くで母親と月路が世から忍ぶように、会話を交わす声が聞こえる。

「お父さん…、ごめんね。」

いつも明るい母親が途方に暮れて泣いているような声だった。月路は優しく「何が?」と返す。

「私が愛した人の運転で、お父さんの愛する人を奪ってしまって。」

声帯が必要以上に震えていて、まるで掠れるように母親の喉から出たようだ。きっと涙を我慢している。今、その肩を抱いて慰めたいのに、どうしても瞼が持ち上がらない。

「何を言うんだ…、」

月路が少し困ったような笑いを込めた声色で、母親に、子どもを諭すように言う。

「あの事故でこちらに悪いところはなかったと、警察の人が言っていただろう?」

そこまで言って、うーん、と考え込むように月路は言葉を紡いだ。

「違うな。そういうことじゃなくて…、事故で亡くなったのは悲しいけれど、そういう運命だったんだよ。きっとね、そう寿命が決まっていて、誰も逆らうことが出来なかったんだ。」

「…。」

母親が鼻を啜る音が聞こえる。と同時に雨の勢いが強くなったように感じた。これは、亡くなった父親と静也の涙なんじゃないかと世は思った。

それから再び強い眠気に誘われて、世は眠りを深くした。家に着いて、母親に起こされるまで気が付かなかった。その頃には、いつもの母親に戻っていた。


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