第17話 嫉妬
ロミオは、今日はフィールの願いから、倉庫からそれほど遠くもない人気の少ない公園でエアガンを使った射撃の練習をした。
フィールは相変わらず所々どこに飛ぶかわからない射撃だったが、ミルに関しては着実に的を射てる。臆病なところがあるものの、そこを潜り抜ければセンスはありそうだ。
「ロミオさん。どーですか。あたしたち結構練習したんだよ」
と、フィールは嬉しそうに言う。彼女の腕前は最初のころに比べれば着実に上手くなっているが、どこに飛ぶかわからない射撃を直さないといけない。
こればかりはセンスの問題だから、彼女にはもしかしたら、これからも上手くなれることが出来ないかもしれない。
「フィール今日は君に使えそうなものを持ってきたんだ」
ロミオはポケットから黒い塊を取り出した。
「何々?」
フィールは作業を中断して、ロミオのほうを見た。
「これは手りゅう弾と言って、拳銃のように打つものじゃない。ここを引き抜いて……」
そこまで説明すると、フィールは言葉を遮った。
「ああ、わかったわかった。あれですよね、置いたら何秒間で爆発するやつですよね。あたし、そんなもの使いたくないんですよね。もっと格好いいものがしたいんですけど……」
「それなら、両方使えばいい。基本拳銃を使って、お守り程度にこれを使えばいい。手りゅう弾だったら、方法さえ知れば誰だって使えるもんだ」
「わかりました。でも、使う機会がありますかね?」
「ロミオさん。ファイナルブレイクはそこまでグランタウンを支配するつもりなんでしょうか?」
と、ミルが眼鏡のフレームを直しながら聞く。
「わからない。最悪の場合そのことも考えられる。人員をたくさん入れるというのは、それほどの人を動かしたいということだろう。組織の一番のリーダー、リュウという人物は見たことはないが、バカな考えはしないはずだ」
青髭のロミオは顎をさすり、客観的に物事を考えていると、フィールは言った。
「その時は、あたしを守ってくださいね」
と、彼女はウインクをして見せる。
「ああ、もちろん。君だけじゃなく、グレンレブル全員誰も失わないように俺に任せておけ」
ロミオは親指を立てて口角を上げた。
出所してからロミオは復讐を成し遂げたら自決をしようと考えていたはずなのに、彼女たちといると何だかそんなこともバカバカしくなるほど、癒されていた。
特に、フィールという女性はアグレッシブで優しい。彼女の何気ない一言が心を動かされそうだ。
ロミオは腕組みをして思案していた。
その時、後ろから幾分離れた木の幹に隠れて三人の様子を見ていた人物がいた。
それは、ヒルゲだった。彼はロミオに対して“フィールをよろしく”と言っていたのだが、まさかこれほど親しくなるとは思わなかった。自分の前ではそんな表情を見せたことがなかった。彼の中でロミオに対する嫉妬がメラメラと募っていて、思わず唇を噛みしめていた。
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