フィリップス・ロミオ
猫飼つよし
第1話 出所
「今日でお前は自由の身だ。当てはあるのか?」
そう刑務官は一人の男に問いかけた。
「まあ、当てはない。俺の親族は誰もいない」
「そうか……。今度はまともに生きるんだぞ。ここには二度と来るなよ」
そう言って、刑務官は大きな門の中に入った。まるで鳴くような錆びた鉄製の扉が強い音を立てて閉まった。
男はため息を漏らした。彼の名前はフィリップス・ロミオという。年齢は四十三になる。刑務所で何度も鏡を見るが、入所したときの年齢は二十七歳だった。
ロミオは人を殺してしまった。裁判の結果深く反省しているということで、情状酌量の余地はあったものの、このグランタウンという街では基本一人殺めてしまったら、二十年の服役が基本である。
しかし、彼は服役中も反省をしながら、黙々と刑務内の仕事を務めていたことで、二十年のはずが十五年で出所することになった。
ロミオはこれから行うことを考えていた。服役中もずっと構想していたことがあった。
――それは、復讐であった。
実は、ロミオは人を殺害していない。アレは単なる殺人に陥れられたのだ。
彼は目を閉じた。
あの出来事――ギャングたちに囲まれた時だ。一人の老人が胸を撃たれた。その時に自分はなぜか路上で眠らされていた。その時に拳銃を持たされていたのだ。
その拳銃には銃口から煙が出ていて、周りから見たら自分が撃ったとしか考えられない。
それが魔昼間であれば人気があったものの、夜の人通りもいない場所――廃墟と化した工場の裏の場所だった。ギャングたちが自分を連れてきたのだろう。
そこで見ているギャングたち。その後に、彼らが用意したのだろうパトカーのサイレンが鳴った時は、はめられたと痛感した。
ロミオはそのギャングたち――“ファイナルブレイク”という集団団体の名前を記憶に焼き付けて手錠をはめられた。
その後に、十五年の刑である。もともと殺し屋スナイパーのロミオだったので、こんな状況になるのも想像はしていたのだが、逃亡することも出来ないまま月日だけが過ぎてしまっていた。
彼は手持ちの金をポケットから取り出した。四百ドルある。これは服役中に業務に取り掛かかって得られた僅かな金である。
――取り敢えず、タバコが吸いたい。そして、あいつに会ってみたい。
ロミオは歩きだした。その目は殺気に満ちた表情だった。
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