18話目 襲撃(sideリュイ)
その知らせを受けたのはリラを別れて20分経った頃だったか……陛下の話を聞き仕事を話をしていると執務室の扉が叩かれ、リラに付いていたはずの騎士の1人が入ってきた。
「報告いたします!ただいま、襲撃に合いました!ですが、鎮圧済みです。これから、衛兵をお借りして襲撃者を城へと護送いたします!」
その報告聞いて騎士に詰め寄る。
「リラは?リラは無事なのでしょうね?」
「は、はい!鎮圧にはリラ様も参加されまして……」
「はぁ!?」
「ひぃ……」
リラが戦いに参加?なんの冗談だ……!
「陛下……!これにて失礼いたします。」
「お、おう……」
有無を言わさず退室する。陛下もあまりの気迫に止めることは無かった。馬を借り、急いで帰宅する。
普段1時間ほどかかる所を30分で帰ってきた。玄関を開けるとリラが居た……。無事を確かめ腕の中に閉じこめる。無事だとは聞いていても姿を見るまでは、本当に生きた心地がしなかった……腕の中で戸惑っているリラにクスリと笑う。
そのまま、リラには部屋で休むように伝えロイからの報告を聞くために自分の執務室へと向かった。
「さて、ロイ。報告を。」
「はい〜まず、馬車で進んで15分程でしたかね〜襲撃にあいました〜。リラ様にはもちろん、馬車の中にいるように伝えました〜。ですが、襲撃者が1名馬車に近づいていたようで、中に入りリラ様を襲おうとしたようで〜」
そこまで聞いてメモするために持っていたペンが握りつぶされる。
「……えっと〜続けても〜?」
「えぇ。」
壊れたペンを近くのゴミ箱に捨てる。
「それてですね〜リラ様自分で〜対処されまして〜なんでも、影を自由に動かせるとか〜」
「影を?」
「えぇ〜ご存知なかったんですか〜?」
「えぇ、壁を作ったり、ダークアローのように……などとは聞いていますが……」
「すごく〜触手のようにうにょうにょしてました〜」
「……あとから見せてもらいましょう。」
触手のように動く影……使い方によってはいろいろ使えそうですね……報告を受けたやり方だと暗殺向きとも言えましょう……。
「あとですね〜」
「はい?」
「あんまり〜動揺してらっしゃらがなかったですね〜。」
「というと?」
「馬車で襲ってきたヤツは〜完全に死んでまして〜初めて人を殺したならそれなりに動揺すると思うんですが〜それもなく、他の騎士たちを手助けしたましたね〜」
「手助けされるのは騎士としてどうなんですかね……」
「そうですね〜騎士たちはこれから鍛え直しですね〜」
「それで、リラが動揺してなかったというのは……?」
「あぁ〜なんて言うんですかね〜こう、罪悪感というものを抱くと思うんですよ〜人を初めて殺しちゃった時って〜葛藤というか……それが一切なくってですね〜無の感情だったというか〜」
「そうですか……」
あれだけ過酷な状況で過ごしていたからそうゆう情緒が育っていないのかはたまた、無くなってしまったか……リラ付きの2人にも様子をしっかり見ておくよう伝えておこう。
「リラのことは様子を見ておきましょう。襲撃者のことですが……ただの野盗ではなかったのでは?」
ここ最近は治安も良かったはずだ、野盗の目撃情報も無かった。だから、リラを1人で返すことが出来た。なのに、今日になって急にと言うのもおかしい。
「そうですね〜野盗にしては装備が整っていましたからね〜どこかの子飼の可能性が高いですね〜生き残ってるヤツに尋問してみますよ〜何人か連れて帰ってるんで〜」
「頼みましたよ。」
一息ついてリラのところに向かうことにする。リラの部屋に入るとお茶を飲んでいたようでかなりリラックスしているリラが居た。ロイが言ったように人を殺してしまったあとの罪悪感は感じでいないようだった。
中に入ってリラの隣に座り話しかける。
「ロイから話は聞きました。 リラも戦ったのですね?」
「はい。」
リラにどうして戦ったのかどうやったのかを聞いてみた。
リラが言うには馬車が開いて怖くって目をつぶった。そして、痛いのは嫌だ苦しいのは嫌だと強く思ったとのこと。
「はぁ〜……。なるほど……それはしょうがないと言うべきでしょうね……むしろ良くやりました。よく自分の身を守れましたね。」
溜息をつきながらもリラの頭を撫でる。リラが自分でどうにかしなければ傷を負っていたか人質にされていたかもしれない。とりあえず、褒めておこう。
そして、リラが出したという影が気になり見せてくれるように頼んでみる。
「さて……リラが出したという触手のようなもの、私にも見せてくれますか?」
そうお願いしてみると元気よく
「はい!」
と返事をして何やら集中してる。そうするとリラの影が動き出しロイが言ったように触手のように動いている。
「できました。」
触っても大丈夫なのかというのも検証したくてリラに聞いてみる。
「本当に影が動いていますね……触ってみても?」
「いいですよ。」
リラに許可を取り触るとひんやりと冷たく柔らかい……不思議な感触だ……触っていると……
「ふふ……」
リラが擽ったそうに笑う。感覚があるのか……??
「おや?影にも感覚があるのですか?」
「あっ……えっと……なんだか、くすぐったい気がして……」
「なるほど……?」
そう答えたリラ。握ってみたりまた触ったりしながら観察する。
「形を変えることは出来ますか?」
「……たぶん?」
変形もするのかと聞いてみると何やら丸にしたり三角にしたりと形を変える。
「……上手ですね……」
いろんな形にしてるのを眺める。そして、リラは自分で影を撫でる。影も懐いているかのようにリラに擦り寄っていた。リラはきっと子の影の有用性をあまり理解していないようだった……。これは完璧に暗殺向き。影があるところなら動かせるようだから……。
「リラ。なるべく、この魔法は使わないようにしましょうか。」
「……え?」
「今日のように身を守ったりする時にはもちろん使ってください。ですが、影を自由に使えることが悪い人にバレると君を利用しようとする人が増えるでしょう。それは避けたいのです……約束できますか?」
「……はい。あっ、でもザック先生には話してもいいですか……?」
「えぇ、アイザック先生は君の魔法の先生でもありますからね。」
リラになるべくこの力を使わないように伝える。自分で身を守る時くらいは良いとしてもあまり周りに知られるのは良くないのはわかった。アイザック先生にも私から伝えておこうと決める。改めて家庭教師の立場として指導もしてもらうといいだろう。
リラには裏の仕事にはあまり関わって欲しくは無い……陽の当たるところで笑っていて欲しいのだ……。
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