7話目 おきにいりはどれ?

泣いてるぼくをリュイさまがぎゅって抱きしめてくれた。


「リラ。私の唯一。もう、君を幸せにしますからね……。」



そう呟きながら。

しばらく、抱きしめてもらって涙も止まったころに体を離す。リュイさまがサクさんから何かを受け取る。それをぼくの目に当ててくれた。濡れたタオルだったみたい。ひんやりして気持ちいい。


「しばらく、冷やしておきましょうね……」

「はい……」


そのまま、リュイさまの膝の上で過ごす。冷やしたあとは一緒にお茶を飲んだり、また、庭の中をお散歩したり……たのしかった。お部屋に戻ってからリュイ様はおしこどをしに違うお部屋へ。どんなおしごとなのかな……

聞いたら教えてくれるかな……


「あの……」

「どうなさいました?」


お部屋を整えていたルイザさんに話しかける。


「リュイさまはどんなおしごとしてるんですか……?」

「……そうですわね……領地がございますからそこから送られてくる資料を見て決裁をしたりですわね。」

「……?」

「リラ様にはまだ、難しかもしれませんが……いろいろお勉強していきましょうね!」

「はい。」


聞いてみたけど、むずかしかった……けっさいって何だろう……いろいろ知りたいなぁ……


「リラ様、お医者様の起き上がっても大丈夫とのことでしたし、ベッドの中だけでは退屈でしょうから図書館から何か持って参りましょうか?」

「としょかん……」


としょかんって、本がたくさんあるところのことだよね……お屋敷に図書館があるんだ……


「リラ様がいらっしゃってから、ご当主様が子供向けの本をと命じられて、絵本などが沢山用意されておりますよ!」



絵本……あの御屋敷でもちょっとみたことある。ボロボロになったのがゴミ箱に捨てられてた……。それを拾ってちょっと見てたら『ごみまであさっていやしいわね』って言われて殴られたんだ……いろんな色があってきれいだったなぁ……また、みれるのかな……



「みてみたいです……」

「わかりました!ご用意いたしますわね!リラ様のお気に入りの絵本が見つかるといいですわね~!」


そう言って、ルイザさんは部屋を出ていった。

どんな絵本がくるのかちょっと楽しみ。


窓の外を何となく眺めていると扉が叩かれる。返事をするとルイザさんとサクさんが入ってきた。2人の手にはたくさんの絵本。


「たくさん……ですね?」

「えぇ!新しく発売されたモノから昔ながらの絵本まで選り取りみどりでしたわ!サクと厳選して持ってまいりましたのよ!」

「ルイザがあれもこれもと選んでおりまして……これでも減った方なのです……沢山ありますのでゆっくり少しずつ見でてくださいね。」


ベッドのそばに置いてあるテーブルにたくさんの絵本か積まれる。


「どれからみよう……あっ……でも、ぼく字……よめないや……」


たくさん用意してもらったけど、字が読めないとたのしめないかも……って思ってると……


「心配いりませんわ!見て楽しむだけでもいいんですのよ!それに、内容が気になるのでしたら私やサクが読み聞かせいたしますわ!」

「えぇ、文字の勉強にもなりますしね。」


ルイザさんとサクさんがそう言ってくれた。



「わかりました……。」



とりあえず、1番上にあった絵本を手に取る。色がたくさん使われていてきれい。

ルイザさんによれば、今手に取っているのはこの国で1番有名なお話らしい。王子がお姫様を助け出すお話だって。

それから、お昼ご飯を食べたあとも絵本のページをめくって楽しんだり、ルイザさんやサクさんに読んでもらったりしながら、絵本を楽しんだ。


楽しい時間もあっという間で、夜ご飯の時間になっていた。朝や夜はリュイさまと一緒に食べている。だから、時間になるとリュイさまがぼくの部屋にやってくる。



「リラ、お散歩の後は何をしていたのですか?」



ご飯を食べながら、今日したことを聞いてくるリュイさま。


「えっと……絵本をよみました……たくさん。用意してくれて、ありがとうございます。」


楽しかったこと、どれが1番お気に入りになったのかリュイさまに伝える。それをリュイさまはニコニコしながら聞いてくれた。



「ぼくのおきにいりはこれです。」



1番近くに置いていた絵本を手にする。タイトルは『ちいさなドラゴンのだいぼうけん』小さなドラゴンがはぐれてしまった親を探して冒険するお話。いろんな国もでてきたし、えもきれいでお気に入りになった。



「そうなんですね。リラのお気に入りが見つかって良かったです。」


ニコニコしてるリュイさまになんだかつられてぼくもニコニコしてしまった。それを見たリュイさまやルイザさん、サクさんがなんだか驚いた顔をする。どうしたんだろう……???首を傾げると……



「あぁ、やっと笑った顔が見れましたね。とっても可愛いです。」



ぼくが笑ったのがうれしかったみたい。よかった。変な顔してたのかと思った……。

そのあとも、ご飯を食べながら絵本の話をたくさんしていった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る