『シャツの街の物語 ―襟たちのささやき―』

Algo Lighter アルゴライター

プロローグ

――さて、また今日もいい布地の風が吹いてきた。

ようこそ、シャツの街へ。わしはこの街で、もう何十年も仕立て屋をやっておってな。針と糸で人生を縫ってきたようなもんじゃ。


この街には、いろんな襟たちが住んでおる。

どんな襟にも、ちゃんと役目がある。見た目も性格も違うが、それぞれが「誰かを装う」ために、一生懸命生きとるんじゃよ。


たとえば真面目なレギュラーカラーの誠実くん。なんにでも合うがゆえに、自分がわからなくなることもある。

ワイドくんは風通しのいい男。初対面では派手に見えるが、人の気持ちに寄り添う優しさがあるんじゃ。

ほかにも冒険好きのホリゾンタル、ノーネクタイ主義のカッタウェイ、控えめな革命児ナロー、伝統を重んじるボタンダウン兄弟、和の心を持つスタンド、夜を舞うウイング、そして二つの顔を持つドゥエボットーニ……


え?襟に性格なんてあるのか、って?

ふふ、あるともさ。何十年もシャツを仕立てとればわかる。

襟は人の首元を支える、小さな意思。人が大切なときに着るものだからこそ、襟には物語が宿るのさ。


さあ、今日はどの襟の話をしてほしい?

針を手に取りながら、ゆっくり話していこうじゃないか。

――これは、シャツの街の襟たちが生きる、小さな物語集じゃ。

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