第16話

階段を上りながら、橘葵は携帯を手にして丁度中腹の3階の階段を上っている所で葵の足が止まる。


「すまん、ちょっと先に行っててくれ」


「ハァ!?何言ってんのこんな時に!!怖くなっちゃったの?」


「それもあるが、ちょっと保険掛けときたくてな」


「まぁ、いいわ。ビルが崩壊しかかってるんだから、早く上って来なさいよ!!」


「お前が居なくても戦況は変わらん。心配せずに逃げ帰るんだな」


「有難くそうさせてもらたいね。出来るもんならな!!」


新しく増えたフレンドリストの名前を見て、葵は悩んだ末に電話を掛けた。

建物の7階で、前田達の奮闘は続いていた。ダメージはあるように見えるが、化け物にしてみれば何という事はない。化け物の原動力が“負の感情“である事は前田達には分かり得ない。5分もの間、化け物は耐えていた。広間は銀銃が切れて、弾を交換して再度攻撃を再開している。前田も丁度霊子銃のエネルギーが切れて、弾切れになる。丁度秋山が動けるようになったのを見て声を上げる。


「秋山、援護は任せたぞ!!」


「ちょっと、本気!?こいつの再生能力はまだ生きてるのよ!!撤退も視野に入れるべきよ!!」


前田は銃を秋山に渡して、自身は霊子剣で突進を仕掛ける。ガードしていた

腕が開かれ、触れようとした腕を切り裂く。手応えを感じるのも空しく残った腕で前田を鷲掴みにすると、前田を宙に浮かせた。


「ぐ・・・この!!」


「前田はん!!」


広間にぶつけるように放り投げる。攻撃を仕掛けようとした秋山には瓦礫を投げつけて壁まで吹き飛ばした。裂かれた腕も瞬時に回復させ、化け物はようやく自由を取り戻した。動いていた者達は今は一人も居ない静かな空間となった。黒田が、ようやく地面に転がったまま腕を掲げて、小型爆弾を発射させる。爆発が巻き起こり、圧倒的な熱量で化け物に傷を負わせるも、化け物は尚も生きていた。嬉々として黒田に近づき、体を起こしてパワードスーツを玩具の様に剥がして遊ぶ。


「どうすりゃこいつを倒せるってんだ!!糞!!」


弾が切れて、黒田も半ば諦めかけていた所に、フロアに声が響く。


「煙臭いわね!!何か燃えてるし、瓦礫だらけだし」


ついでに天井も無くなっている。


「気を抜くな、上に奴が居るぞ。攻撃を仕掛けるなら、あいつが戻ってくる前に蹴りをつける」


「巻き込んじゃうもんね」


「出来れば一緒に殺したいがな!!」


丁度、化け物が挟まっていた穴から上へ飛び出して、上の階へ移動する。白虎の咆哮と同時に、落雷が化け物に直撃する。銃撃や爆撃すらものともしない化け物が、驚きと共に悲鳴を上げる。四聖獣と呼ばれる式神の攻撃には破邪の効果があり、銀銃の非ではない。もう幾度も浴びれば消滅は免れない。化け物は、たまらず窓を飛び出した。壁すら破壊して、落下が始まると思われたが、化け物はゴロゴロと宙を転がった。空中に浮かび上がる巨大なブリッジが出来上がっており、街の外まで続く巨大な空中浮遊橋が完成していた。




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