第11話

 SATがヘリで上から、そして自衛隊が地上から攻め入る。門の所から様子を伺うとすでにそこは戦場と化しており、武装集団がマシンガンを放つ銃声が響き渡っている。爆弾による破壊音も聞こえており、本当にここが日本なのか疑ってしまう。


「何だァ?すでにSATが攻撃を仕掛けたのか?」


【どうした、何か異常でもあるか?】


「いや、何か車が玄関に突っ込んでんでだが。それに、上で派手に爆発音してるし」


【上層階には、陰陽庁所属の二宮准尉がすでに潜入している。君たちは構わず、武装集団を殲滅してくれ。予想よりも数が多い】


「了解、これよりテロリスト殲滅に入る・・・って、二宮准尉ってあれか?」


上層階の窓から飛び降りて、手首から放たれたワイヤーでヘリを一台捕まえる。その後そのままヘリにぶら下がったまま戦場を後にして去っていった。一同唖然としているも束の間、すぐに銃声が響いてそれどころではなくなる。銃を手に取り、遠藤率いる第二部隊はSATのヘリによる援護射撃の間に研究所の敷地内へと入った。玄関の爆発した車を盾にして銃撃戦を展開する。窓から顔を出した相手はヘリから容赦なく狙撃されて絶命していく。自衛隊の狙撃手も正面から展開しており数の有利は圧倒的に思えた。絵美も銃を射撃しているが、相手の射線に入らない様にするのが精いっぱいだった。数が減ってテロリストが上層階へと逃げたのを確認すると、遠藤が手を振って館内に突入した。


 

 研究所の近くにある道路。大型のトレーラーが一台停車しており、複数人の自衛隊が立っている。ここから先の研究所へ一般市民を行かせない目的もあるがもう一つ重要な意味合いもある。目視で分かる距離で、少女数名が全力でこちらに疾走してきている。自衛官は慌てて少女の足を止めた。


「そこの君たち止りなさい!どうしてこんな所へ?」


「研究所へ見学に行こうとしたのですが、余りに恐ろしい光景に

車を降りて逃げて来たんです」


「連中の仲間ではないという保障が無い以上はここを通す訳にいかなくてね。少し時間貰えるかな?」


自衛官の一人が一歩近づくと、無線で連絡が入った。


【正面から少女数名が市街へ逃げている模様。通し てあげて下さい】


「は?ええと、構わないので?・・・・・・はい、分かりました」


無線を切って、自衛官が3人に告げた。


「ごめん、時間取れなくなちゃったから通っていいよ」


そう言われて、3人は安堵しながら先へと進む。自衛官は何かに気が付いたのか呆然としている。大型のトレーラーから、前田二等陸尉が下りて自衛官に肩を叩く。


「今は何も出来ん。機会を待て。俺達はその為に秘密裏に準備してきている」


それを聞いて、自衛官は大きく目を見開いて、それから悔しそうに大粒の涙をボロボロと零した。自分の家が瓦礫の山になっていて、生きる場所と家族を奪われた記憶が鮮明に蘇る。


「自分は・・・自分たちは何も出来ないんですか?」


「『今は』な。あいつが怪物に戻らん限りはどうも出来ん。だがもし機会があれば・・・」


(その時が来たら、今度は容赦なくお前諸共引き金を引くぞ、遠藤――――――――――)


その背後を眺めながら、自衛官は綾乃の後姿を焼き付けた。それから暫くして、研究所の方から爆発の音と銃声が響き渡った。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る