第12話

ほかの人たちがかなり盛り上がったようで、カラオケへ行く流れになった。




何故か私の荷物を持ってお店を出たケイは、ぴったり隣に着いて歩く。ハルよりも少しだけ低い背に違和感があった。




「あ…、ごめん。私もう帰らないと」




「なんで?もしかして門限あった?」




「そういう訳じゃないんだけど、ちょっとね」




スマホにおびただしい数のメールが来ていた。どれも兄からだ。




「おーい、ヒナ帰るって」




前を歩くみんなに声をかけてくれて、荷物を渡してくれた。




「あっ、じゃあメアド教え「陽菜」」




聞き馴染みのある声が背後から聞こえて振り返ると、家を出る時よりも怒っているハルがいた。




「帰るよ」




「あっ…」




手に持っていた荷物を奪われ、もう一方の手で私の腕をきつく握る。




――こんなハル見たことない




明らかにイライラしている兄は、ケイに向かって低く、それもゆっくりと言葉を紡ぐ。

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