第2話

支度を終えて、まず初めにすることは兄の部屋に行くこと。



目的は兄じゃなくて――兄もだけど、飼っている亀にあいさつをする。小さい頃、お祭りに行った時にカメすくいをして買うことになった亀太郎だ。



「太郎おはよう。今日も元気だね」




寝床から出てきた太郎にあいさつをして、ちょんちょんと水槽を触れば、返事をするように何度か頷いてくれる。そうしてまた寝床に戻るのだ。




「……なんで毎日俺じゃなくて亀が先なの」



「あ…、おはよ」



「絶対忘れてたでしょ」



俺の部屋なのに。とベッドの上で不服そうに頬杖をついているのに、ふわふわした寝癖が可愛くてつい笑ってしまう。



「ふふっ。ごめんね?」



そう言って、返事を待たずに階段を下りると、追いかけるように兄も降りてきて、隣に並んで歯磨きをする。



これまた並んで朝ごはんを食べて、見送る母に手を振って一緒に登校する。これが毎日のルーティン。

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