世界中で君だけを

しおぽてと

プロローグ

郊外から少し離れたところに、春になるとカスミソウがたくさん咲く丘がある。



少しばかりの遊具やベンチが置かれたそこは、賑わっても寂れてもいないそんなところ。




夏に向けて少しづつ暑くなる5月。




「ひなちゃん」



「なあに?」




男の子は花かんむりを作って、女の子の頭に優しく乗せる。見た目はあまり良くないけれど、何度も何度も練習して作ったもの。




「おおきくなったらけっこんしよう」




花かんむりと共に贈られた言葉は、女の子にとって胸いっぱいになるほど嬉しいもの。今はまだ言葉の意味まで理解できなくても、心でなら理解できる。




屈託のない笑顔で、けれど全身で伝えてくる愛情。まるでこの世に2人しか居ないような錯覚を覚えるほど、お互いしか見えていなかった。





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