第29話 魂の炎、竜魂の共鳴
試練の番人、骸の巨人を打ち倒し、クローたちはついに最奥の扉の前へとたどり着いた。
蒼白い炎が灯る扉は、彼らを静かに見下ろしている。
「ここが……最終試練の地か。」
ブレインが剣を握りしめる。
「さあ、行こうぜ!」
クローが勢いよく歩み寄る。
しかし、その時――
「待て。」
墓所の奥から、深みのある声が響いた。
クローたちの前に現れたのは、かつてのドラゴンナイツの魂の管理者 ―― 「試練の守護者」 だった。
「汝ら、試練を求めし者か?」
「はい、そうです!私は現ドラゴンナイツのリーダー、ドラゴン・ブレイン!より強い力を得るために仲間のナイツと共に参りました。どうか、試練をお与えください。」
ブレインが名乗りを上げ、試練への挑戦を願う。
「承知した、だが……。」
彼は静かにティアーへと視線を向ける。
「そこの黒き翼の者……貴様には、この試練を受ける資格がない。試練を受ける資格のない者は、この門をくぐることはできない」
その言葉に、一瞬空気が張り詰めた。
「……は?何ですって?」
ティアーが眉をひそめる。
「資格がないって、どういうことだ?」
クローが守護者に問いただす。
「試練は、“ドラゴンナイツの魂”を継承し“飛竜と共にある者”が受けることが許される。
「つまり、お前は試練を受けられないってことだ。」
ウイングが淡々と説明する。
「今、聞いたわよ。3回も言わなくたってわかる」
ティア―は肩をすくめて、つまらなさそうに笑う。
「ふん、まあいいけど? 今さら強くなりたいとも思わないし。」
彼女はくるりと背を向け、壁に寄りかかった。
「外で待つしかないってことね……。お前らは勝手に試練を受けてくればいい」
ティア―はあくまで 冷めた態度 を崩さなかった。
「……分かった。行ってくる。」
その言葉にクローは一瞬、言葉を詰まらせたが静かに頷き、それぞれのアーマードワイバーンと共に扉を押し開く。
そして、試練の間へと足を踏み入れていった――。
***
扉をくぐると、クローたちは広大な円形の祭壇に立っていた。
中央には、三体の巨大な飛竜の彫像が鎮座している。
その瞳は青白い炎を灯し、試練を受ける者を静かに見据えていた。
「……ここが、試練の地か。」
「では、資格を持つ者よ。試練を受ける覚悟はできたか?」
試練の守護者が静かに問う。
「当然だ。」
クローが即答した。
「よかろう。ならば、“お前自身”と向き合え。」
その瞬間、竜の墓所の空間が歪んだ。
足元に魔法陣が浮かび上がり、空間が引き裂かれるような音が響く。
竜の彫像が光を放ち、それぞれの前に光の幻影が現れた。
「お前たちは本当に、この力を得る資格があるのか?」
それは、**三人自身の“影”**だった。
***
ウイングの前に立つ影が冷たく言い放つ。
「お前は使命を果たせなかったのに生き残っている。お前はハートを止められなかった。ドラゴンナイツとして何もできず、ただ逃げただけの男だ。」
「……!」
「何もできなかったお前が、この力を得る資格があるのか?」
「……俺は……!」
ウイングは目を閉じ、拳を握る。
「確かに、俺は無様に生き残った。でも――」
彼は目を開き、槍を構えた。
「生き残ったからこそ、できることがある!」
ブレインの前に立つ影が、静かに問いかける。
「お前はリーダーとして何を成し遂げた?仲間を見殺しにして自分は生き残った。その罪を背負って、お前はまだ戦うつもりか?」
「……。」
ブレインは剣を握りしめる。
「俺は……確かに仲間を救えなかった。」
「ならば、戦う資格はない。」
「……いや。」
彼は影を真っ直ぐに見据えた。
「俺は託していった皆の思いを背負い、リーダーとしてドラゴンナイツを導く務めを果たし続ける!」
クローの前に立つ影が、冷たく問いかける。
「お前は本当に柚希を守れる存在だったのか?お前は、彼女を守ると言った。それなのに……!」
影の背後に、ハートが光の中で倒れる光景が浮かぶ。
「お前の無力さが、彼女を傷つけた。」
「……違う!! 俺は……俺は……!」
「本当にそうか? なら、なぜ彼女は今、ここにいない?」
クローの拳が震える。
「……俺は……柚希を、守れなかった。」
「では、お前に戦う資格はあるのか?」
「それでも……!」
クローはゆっくりと顔を上げ、影を睨みつける。
「俺は、もう二度と仲間を失わないために戦う!」
ならば示せ――魂の絆が、真なる力を生むことを!汝らは、飛竜と共に生きる者!
「……魂の絆を示せ、か。」
クローはゆっくりとカイの首に手を置く。
(俺たちは……一緒に戦ってきた。俺がここまで来れたのは、お前がいたからだ。)
「――カイ!」
クローが叫んだ瞬間、カイの体が黄金の光を帯び、全身から熱気が吹き出した。
その熱気がクローを包み込み――
轟然たる炎の爪が、その腕に宿る。
「これは……!」
クローの鎧が、カイの鱗と同じような紋様へと変化し、竜の力をその身に纏った。
「なるほど、飛竜と共に戦う力……それが、ナイツの真髄か。」
ブレインがヴァルハイドを撫でながら呟く。
ヴァルハイドが光の波動を放つと、ブレインの剣は巨大な光の大剣へと変貌した。
「これなら、敵の軍勢すら切り裂ける……!」
ウイングのゼルフィードも強風を巻き起こし、その風が彼の槍へと吸い込まれる。
「“風の槍”か……面白いじゃないか!」
クロー、ブレイン、ウイング。
それぞれの相棒であるアーマードワイバーンと魂を共鳴させ、力を手にいれた――!
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