第13話|おでんと、長い夜の距離
だしの香りに包まれた、静かな夜のすこし長い時間を。
「……寒いね」
「うん。でも、おでん、煮えてきたよ」
湯気の立ちのぼる鍋をふたりで覗きこむ。
部屋の照明は少しだけ落として、湯気の中にふわりとやさしい時間が流れた。
この日はなんとなく、お互い話しすぎず、でも距離はちょっと近かった。
おでんは、そんなふたりをそっとつなぐ魔法のスープになった。
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今日のレシピ|だしがしみしみ おでん(2人暮らしver.)
材料(2〜3人分)
* 大根 … 1/4本(2cm厚に切って下ゆで)
* たまご … 2個(ゆで卵)
* こんにゃく … 1枚(スプーンでちぎる)
* 厚揚げ … 1枚(半分にカット)
* ちくわ … 2本(斜め半分)
* はんぺん … 1枚(四つ切り)
* 結びしらたき … 2個
* 練り物 … お好みで(がんも、さつま揚げなど)
だし
* 水 … 800ml
* ほんだし(顆粒) … 小さじ2
* しょうゆ … 大さじ2
* みりん … 大さじ2
* 酒 … 大さじ1
* 塩 … 少々
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作り方
1. 下ごしらえ
大根は皮をむいて面取りし、十字に隠し包丁を入れて下ゆで(米のとぎ汁か少量の米を入れて15分ほど)。
ゆで卵は固ゆでにして殻をむく。こんにゃくも下ゆでしてアクを抜く。
2. だしをつくる
鍋に水と調味料をすべて入れて火にかける。沸騰したら具材を加えて弱火に。
3. コトコト煮る
具材を重ねすぎないように並べて、30分〜1時間じっくりコトコト煮る。
途中、味をみながら調整。煮詰まるので水を足してもOK。
4. 食べる直前に
はんぺんは最後の10分で加える。煮すぎると溶けやすいので注意。
火を止めて少し置くと、味がさらにしみる。
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楓が小皿に取り分けると、日向がそっと口をつけた。
「……やばい。沁みる」
笑ったような、泣いたような声。
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味の感想(by 日向)
だいこん、しみしみ。噛んだ瞬間にじゅわっと出汁が広がって、体に染み渡る。
厚揚げとこんにゃくも、ひと晩一緒にいたみたいに仲良くなってる。
「なんか、静かであったかい。ずっとこのままでいたい」
そう思う夜が、鍋の湯気の向こうにあった。
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テレビもスマホもつけず、ふたりだけの長い夜。
言葉は少なかったけど、それはたぶん――いちばん、近かった夜。
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次回は「いちごサンドと、ふたりの土曜日」
甘酸っぱい果実と生クリームで綴る、のんびりで特別な休日のはなし――
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