No.006 2人のギター side-ハナ/ユキ

 1節 差


 あたしはギターを弾いている。

 それはこのバンドのもう一人のギター、祐樹ゆうきくんも同じ。

 今日はセッションの日。なんだけど、今のところコードギターとリードギターが決まっていないからそれぞれどっちが担当するか決めることになった。

 リードギターは、メインのメロディやソロを担当して、ギターと言えばこのパート!ってギター。

 対してコードギターは、和音コードで曲に厚みを出す、どちらかと言えばベースに近い役割をするギター。

 一応、それぞれの担当にギターの種類は向き不向きがある。

 祐樹くんが操るジャズマスターはコード向き。私の使うレスポールはリード向き、な気がする。

 正直別に種類はどっちでもいいけど。

 けど、ギターの腕は一応祐樹くんの方が上だから、多分リードはあたしじゃない。

 私だってリードはやりたいけど。だって、ソロ弾いて目立てたらかっこいいし。

 でも、なれない。私が下手だから。

 練習しなくちゃな。

 絶対祐樹くんを見返してやる!



 2節 練習


「ねぇねぇ!一緒に練習しよ!」

 4人で会って早々、月花が話しかけてきた。

 何があったんだか知らないが、元気さに磨きがかかっているのは間違いない。

 いつものスタジオに入り色々準備を終えたら、それぞれで練習を進める零と和也さんを横目に二人ギターで練習を始めた。

「いつもどんな練習してるの?」

「マイナーペンタとか、リズム練とか……」

 そう話し始めると、今まで見たことも無いようなものを見る目で見てきた。

「……もしかして」

「なにも、わからない」

「やっぱりか」

 残念なことに予想通りだった。

 むしろ、なんでその状態であれだけ上手く弾けていたのかよく分からない。天性の才能というやつだろうか。

 話を聞いていくうち、基本的な音符の理解とかはできているようだったのでどのように練習していくかを教えていくことにした。

 まずは、リズム練習から。


 ——————————


「で、ひと通り基礎練は教えてみたが、どうだ?」

「めんどい!!」

「まあそうだろうな」

 一応ついて来れてるあたり、やはりある程度は上手いが、かなり疲れるらしい。

 ただやる気はあるらしいので、これから上手くなるだろう。

 月花は相変わらず渡した楽譜に百面相をしている。

 しかしひたすらピックを持って音出しはしてるので、多分すぐに上手くなる。

 とりあえず一通りは教えたので、いつも通りの練習に戻ることにした。



 3節 簡単で難しい練習と親友


 なんか必殺技みたい。それが真っ先に出てきた。祐樹くんの知識量すごすぎる。

 5つの音から構成されるからトニック、そして短調マイナーで構成される音階スケールだから、『マイナーペンタトニックスケール』って言うらしい。

 なんでも、これが弾けると大半の曲でソロが弾けるようになるとか。よく分からないけど便利そう。

 あと、リズム練習も教わった。

 四分音符、八分音符、三連符、16分音符を順番に上がったり下がったりする。

 よく吹奏楽でパーカッションの人がしてるやつ。懐かしい。

 で、それはどの楽器でもめっちゃいい練習っぽい。

 リズムが取れないと難しい拍子や複雑なソロが弾けない。それは本当によく分かる。だからこういうのを教えてくれるのはすごく助かる。

 練習が終わった今、スマホにメモったそれを見返しながら帰っている。

「いいこと教えてもらえたか?」

「うん、だいぶ嬉しい」

「その辺の練習は大事だからちゃんとやっとけよ」

 深夜9時の電車の中、適当に和也と話しながら。

 聞こえるのはガタゴト鳴る走行音とたまに流れる停車駅のアナウンスだけ。

 あとは和也の声。

 なんだかんだ一番話してて落ち着くのはカズの声かも。

 付き合いが長いのもあるだろうけど。なんだかんだ毎週ここでよく話している。なんか古臭い電車でちょっと嫌だけど。

 東京に向かう方面の電車はピッカピカなのになあ。

 窓の外を見ても、何もない。無いというか、見えない。

 そこにあるのに見えない。

 10メートルくらい先ならまだ見えるけど、その先は何も。

 なんか、こういうの見てるとよく分からない気分になる。

 やるせないとかそういうのとはまた別の感情。

 あんまり詳しくないからこういうのは分からないなあ。

 国語はあんまり好きじゃない。国語っていうか、小説文とかかなあ。

 主人公の気持ちとか主人公にしか分からないし、何百年も前の話なんか読んだって別に意味ない。評論文とかは読めないと困るし、その授業だけでいい気がする。

「なんか考え事でもしてるか?」

「和也って人の心読むの得意?」

「お前が分かりやすいからなあ」

「むー……」

 とりあえず何考えたってどうしようもないし、また家で練習しよう。

 せっかく教えてもらったことを無駄にしないためにも!



 4節 帰り

 和也と別れたら家までひとりぼっち。

 ギター背負ってクロスバイクで。

 ひとりってなんか寂しい。当たり前だけど。

 ヘッドライトが先を照らす。ちょっと頼りない光。

 ヘッドライトとして最低限くらいの光。

 これ一応ちょっと良いやつなんだけどな。

 そんなんはいいけど。

 毎回補導対象になる22時ギリギリくらいに着くからちょっと怖い。

 大丈夫。警察はいない。よくはないけど。

 踏切で止まってスマホを見れば、今日はまだ21時30分。

 スマホをしまって前を見れば、さっきまで乗ってた普通列車。

 あと何駅か通れば、山越えして行くらしい。

 さっきは古臭いとか思ってたけど、あんな4両しかないのに山を越えられるなんて、すごい。

 私も頑張らないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る