第3話早速行ってくる
「ホントに魔法なのっ!?」
「ホントだよ。信じる信じないは任せるけど」
「…早房君って何者なのか聞いても大丈夫かな…?」
「一応普通の人間だよ?」
「普通の人間は魔法使えないんだよぅぅぅぅぅっ!?」
「歌羽根さんて面白いよね?」
「違うっ!?私が面白いんじゃないんだよ!?早房君がおかしいから私までこんな風になってるだけだから!!!」
「天音落ち着いて?それに豊和も天音で遊ばないの」
「あ、遊ばれてたの…?」
いやいや…反応が面白かっただけで、遊んでるつもりはなかったんだけどな。
「とにかく…」
「何がとにかくよ」
美樹子は茶々を入れないように…。
「ストーカーの件を解決してから歌羽根さんの引っ越しに取り掛かろうか」
「…へっ…?そんなに簡単にストーカーの件って解決するの?」
「まあ、魔法使えるんで。チョチョイとね」
「あっ…そっかぁ…ま、魔法使えるなら…簡単…なのかなぁ…?」
簡単簡単。
「一応…気をつけなさいよ?」
そう真っ先に声を掛けてくれたのは美樹子だ。
「うん。ありがとうな?」
「べ、別に…お礼を言われるまではないわよ」
「じゃあ…行ってくる」
そして…俺はストーカーの元へと転移──
♢♢♢
「くそっ…どこに行ったんだ…?俺の天音は…。喫茶店からまだ出てきてない筈だけど…」
「──お前の歌羽根さんじゃないけどな?」
望遠鏡を覗き込む彼の背後からそう声を掛ける。彼はこのとあるマンションの屋上にまだ居たようだ。喫茶店を出てすぐに彼がこの場所から歌羽根さんの様子を覗っている事に気がついた。まあ、それも魔法だし、彼には歌羽根さんが見えなくなる魔法もついでに掛けておいたわけだ。だから彼は今も歌羽根さんは喫茶店の中に居ると思い込んでいる。
彼がとにかくこの場所に居てくれて良かったよ。
「──なっ!?だ、誰だよ、お前っ!一体いつの間にっ!?この場所に出入りするドアには鍵をつけておいた筈だ!」
「名乗っても無駄だと思うし、それを聞いても無駄だと思う」
「ふっ、ふざけんなっ!?何が無駄なんだよ!?そ、それにお前さっきなんて言った!?俺の天音が俺のモノじゃないと言わなかったかっ!?」
「言ったよ。もう一度言おうか?歌羽根さんはお前の者でもないし、モノでもないよ」
「っ! こ、コイツ…殺してやる…!!」
おお…おっかないおっかない…。殺してやるとは物騒なものだ。男が腰の拳銃を抜こうと拳銃に手を掛ける。
拳銃から分かるように、歌羽根さんをストーキングしていた男の正体は警察官…。彼の名前をわざわざ聞こうと、知ろうとは思わない…。
警察官と言えば社会の治安維持や市民の安全保障。それに犯罪捜査や交通安全指導、それから防犯指導など、様々な業務を担う職務だろうに…。
なんと嘆かわしい…。
俺はそんな事を思いながら彼が拳銃を抜ききる前に魔法を唱える…。
「──
「なっ!?け、拳銃がっ!?」
俺が唱えたのはとてもシンプルな魔法だ。俺が対象にした物なんかをイメージ通りに分解する便利な魔法。男は勝手に拳銃がバラバラになっていくので非常に驚いているのが見てとれる。
そのまま…次の魔法を唱える。
「──
俺の掌から放たれた火の玉のような黒いモヤが男の額から脳の中へとすり抜けるように侵入して脳を黒く犯していく…。
「────お、おい!?ここはどこだ!?お前達はなんなんだ!?止めろっ!止めろ止めろぉぉぉぉぉぉ!!!俺を尾けまわすのは止めてくれぇぇぇぇぇ!!!」
「…自分が犯した事を味わえるんだ。嬉しいだろ?醒める事のない悪夢を一生堪能してくれ」
悪夢構想は俺がイメージした悪夢を一生見続ける魔法…。俺がその魔法を解除しない限り解ける事はない…。まあ、解除するつもりはないけどね…。
だってストーカーの被害っていまだかなり深刻なんだぜ?調べたところによると、ストーカー被害は平成28年に一度ピークを迎えてしまったらしい。んで、その後はほんの少しだけ減少傾向にあるものの、依然として高水準で推移していると言われているんだ。
よくニュースでも見るだろ?ストーカー被害は…最後には殺人に発展する場合もあるんだ。
そんな相手に情けが必要か?俺は必要ないと言い切る…。そういう甘い考えは向こうで捨ててきたしな…。
「…そういやあ、こういう時は【良い夢見れたかよ?】の方がカッコ良かったか…?まあ、どうでもいいか…」
俺は転移の魔法を発動──
美樹子や歌羽根さんが待つマイタワーマンションの屋上テラスへ転移した…。
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