4.スパイの存在示唆。






「……この学校に、スパイ?」

「えぇ、そうなのです。いつ頃からか不明ですが、最近になってシステムへの侵入を試みる者がいまして」



 生徒会室に入ると、レイラさんが一人でパソコンと向かい合っていた。

 そして僕の存在に気付くと、彼女はそう語ったのだ。



「試みる、ってことは、まだ漏洩はしてないんですね」

「そうですね。ただ極端に慎重な人物なのか、痕跡がほとんどなかった」

「だからいまは、注意に留めておく、ってこと?」

「その通りです」



 こちらは空いている椅子に腰かけて、ひとまずの状況を確認する。

 なるほど。これはたしかに、共有しておくべき内容だった。

 ただ気になるのは――。



「……でも、なぜにここで?」



 僕が疑問をぶつけると、レイラさんは手元にあったペットボトルを手にする。

 そして、飲料を一口してから、ふっと小さな笑みを浮かべた。



「いえ、たいした理由はないですよ。ただ強いていえば、田澤くんの学生らしい姿を見ておきたい、という気持ちでしょうか?」

「なんですか、それ」

「ふふふ。なんでしょうね、これ」

「いえ、訊いてるのは僕ですが?」



 煙に巻くような返答に思わずツッコむと、彼女はまた笑う。



「そうですね、ただ理由は私も分からないのです。もしかしたら暗殺者としてのキミ以外のこと、見てみたかっただけかも」

「暗殺者としての、僕以外……ですか?」

「えぇ、確証はないですが」



 すると、ようやく答えのようなものが出てきた。

 だが今さらなことに、僕は思わず首を傾げてしまう。それに対して、レイラさんは次に真面目な表情になってこう続けた。



「私の中のキミは、悪魔憑きの暗殺者、という印象が強い。ですが、それは田坂くんの一つの側面にすぎません」

「それとなると、たしかに僕も『雇い主としてのレイラさん』しか、知らないです」

「そうですね。ただ私たちは同時に、同じ高校の生徒、でもありますから」



 ――だから、たまには場所を変えて親睦を。

 レイラさんはそんなことを言いつつ、ふっと息をついた。そして、



「そう考えると、互いに『どちらが本当』なのでしょうね?」

「え……?」



 途端に意地悪い表情になって、そう試すようなことを言う。

 どちらが、本当の自分、か……?



「そんなの、どちらも自分じゃないんですか?」

「うふふ。そうでしょうか、田上くん」

「…………ん?」



 僕が普通の答えを口にすると、彼女は微かな愉悦のようなものを見せた。

 こちらが思わず眉をひそめていると、こう続ける。



「もし、どちらも本当のキミなら。キミは到底、普通とはいえない」――と。



 その言葉に、僕は思わず唾を呑み込んだ。

 彼女の言いたいことは、こういうことだろう。僕は自分が『普通』であることを求めて、先日は『特別』であることを不要だとした。しかし『悪魔憑きの暗殺者』も自分だというなら、僕は果たして『普通』なのか――と。



「………………」

「その点について、キミはどう考えていますか?」



 その上で、レイラさんは僕に問いを投げたのだ。

 なんと人を試すことを言う人、だろうか。僕はそれに対して、



「すみません。先に訂正すると、僕は田中で――」

「……と、すみません。どうやら聞き耳を立てている者が、いるようです」

「え……?」



 自分なりの答えを出そうと、そう口にしたときだった。

 生徒会長は鋭い眼差しになって、部屋の出入り口を睨みつける。そして呆ける僕を置き去りにして立ち上がり、



「失礼します。……少し趣味が悪いかと思いますよ?」

「……あっ!」

「やば!?」



 ドアを強く開いた。

 すると、そこにいたのは――。



「赤城くんに、細川さん!?」

「あ、あはは……」

「す、すみません……」




 クラスメイトの二人だった。


 

――

今日は2話更新でした。

面白かった、続きが気になる、更新頑張れ。


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異世界ファンタジーの暗殺者ものも、書いてみました。

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