《アキラ先生の みんな なかよくするには?》

ラベルには、以下の注意書きがある。


> 《アキラ先生の みんな なかよくするには?》

(配慮教育補助教材/児童思考矯正プログラム)

※視聴中の発言は、全て記録されます





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映像が始まると、教室の壁にはびっしりと「禁止ワード」が貼られている。

「おとこ」「おんな」「ふつう」「ちがう」「まちがい」「はずかしい」「じゆう」……

子どもたちは全員、名前の代わりに数字が書かれた名札をつけている。


アキラ先生が登場し、いつもの笑顔で語りかける。


> 「こんにちは、みなさん。

きょうは、“ことばのけが”について べんきょうしましょう」

「ことばは とても こわいものです。

だから、まちがっても、いってはいけません」




授業が始まると、児童のひとりが「おれ、昨日サッカーして――」と口にした瞬間、

チャイムが鳴り、先生がすぐさま歩み寄ってくる。


> 「“おれ”というのは、“わたし”ではないですね?」

「“サッカー”というのも、“みんなができるもの”とは限りません」

「あなたのことばは、だれかを きずつけたかもしれない」




そう言うと、アキラ先生はその子の名札を剥がし、

黒板に貼り出す。「001:言葉に失敗」。


以降の授業では、子どもたちが言葉を発するたびに、先生が「訂正」を入れる。


「楽しかった」→「個人的感想にとどめましょう」

「僕の意見は」→「みんなの意見としてまとめましょう」

「嫌い」→「受容に課題があります」

「わからない」→「情報理解の努力が不足しています」


次第に子どもたちは、発言そのものをやめていく。

最後には全員が無言で机に向かい、ノートに「これでいい」とだけ書かされる。



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終盤、アキラ先生はこう語る。


> 「せいとたち、ことばはむずかしいですね。

でも、しゃべらなければ、まちがいません。

そして、だれも きずつきません」

「だから、わたしたちは――だまって、なかよくするのです」




画面は教室からズームアウトしていく。

遠くから見ると、子どもたちは一斉に口にテープを貼られ、整然と並んでいる。


黒板には最後にこう表示される。


> 「なにもいわない、が、いちばん やさしい。」





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このビデオの視聴後、ある学校で突然子どもたちが一切口をきかなくなったという記録がある。

校内では、最後まで話していた児童が「言葉に殺される」という謎のメモを残して転校したという。



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