第22話 盆踊

"おい、長田にゃんこ"


"…"


"無視すなワレェ!!"


"…はい。何でしょうか隊長?"


眠くなってソファのー上でウトウトしていた。

せっかくクーラーの効いた涼しい部屋でのんびりしてるのに。

てかにゃんこって言うな。


"良いじゃないか、にゃんこなんだから"


"隊長、鼻息が荒くて気持ち悪いです"


山田の嫌そうな声が聞こえる。

鼻の穴が広がったマリィの野性的な顔が頭に浮かぶ。


"さぁ、今日も私達にアレを見せてくれ"


"ふざけんなよ"


マジでよ。

何考えてんだこいつら。


"こいつら呼ばわりですよ、隊長"


当たり前だ。

任務と何の関係もねぇだろ。


"ミカエル、貴君も何か言ってやれ"


"…"


ミカエル居たのか。

周りのイカれた大人を諭してやってくれ。


"…やりたまえよ、長田尊"


そうか、お前もイカれてんだな。


"聞いたか、長田にゃんこ?"


得意げなマリィの声。


"イカれているのは長田尊。貴様の方だ。"


あ?


"何だと、ミカエル?"


"貴様の見た目はもはや可愛いと書いて愛す可し。愛さなければ罪となる領域なのだ"


やべぇ奴しかいねぇんだが?


"さぁ、昨日は3時間しか寝れていない超絶美女のマリィ隊長のためと思って!"


寝ろって超絶美女!最近は平和だから!大丈夫だから!


"さぁ、さぁ"


ミカエルの低い声が絶妙に気持ち悪く、

その声に促されるように俺は…遂に、アレをやった。


まず、ソファのー上に2本足で立った。

それから、前足を持ち上げて盆踊りを踊った。


"がはぁぁぁぁ!!!!"


"ふぁーーーツ!ふぁ!!"


うるせぇな…

ソファのー上はフカフカしていて、

何となく足元がおぼつかない。


"ヨタヨタしてるの可愛いっすね!"


山田が後ろを振り返っているような声がする。

マリィに話しかけているんだろう。


"もういいだろ"


俺はソファのー上に前足を下ろした。


"あぁ~もう終わりか"


ミカエルが心底残念そうな声を出す。

任務中のミカエルを知っているだけに、気味が悪いぜ。


"俺はもう寝る"


今は13時。後2時間ほどすれば、兼近少年が帰って来る。

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