13日目

7月に入り大学も、もうすぐ夏休みだ。

それにしてもここまで色々ありすぎた。

パパが帰ってきたと思ったら、堂院やユリアの件やら、カナタのストーカー事件やら

休む暇がなかったよ。


単位もここまで順調だし夏休みはバイトもやんなきゃいけないけど、大学生らしく夏休みをエンジョイしなきゃ!


「そこでハルカ先輩、ご相談が」


なんで、だ……


目の前に誰もいなかったのに。一瞬でユリアが目の前に!この子、最近ちょっと人間辞めてない!?


「いい加減おどろかなくなったと思ったけどあんたどうやって現れたの?」


「先輩あなたへの愛故に」


優雅に手を広げてユリアは得意気な顔をして言う。

なんで振りつき?

意味不明!

理由を説明しろー!


ハア、ハア、ハア……、この子と話してると本当につかれるよ……。


「で、相談って?」


「実は2週間後からわたくしの家の所有している南の島にバカンスで訪れる予定なのですがご家族揃って同行して頂けないかと思いまして」


ユリアからの提案はとても嬉しいんだけど

家族全員っていうのは無理があるよねー。


「それは嬉しいんだけど、カナタは良いとしてもパパとママは仕事あるから無理だよ」


それを聞いたユリアがニヤリと少し悪そうな笑みを浮かべて言う。


「先輩、実は偶然にもお義父様とお義母様のお勤めになっている会社がうちの系列になりまして、うちのグループ企業は全て7月15日から1ヶ月の休暇を取ることが義務づけられているのです。ほんとうにぐうぜんだわー」


あまりの演技の下手さ加減にビックリするわ!

偶然でもなんでもないなこれ。でもいくらなんでもそこまで出来るもんかなぁ。

夏休みの為に企業買収するなんてさすがにしないよね。


しないよね!?


「パパとママが大丈夫なら私は良いけど」


「御心配には及びません。外堀は埋めております、先輩が最後の障害でしたので」


いつの間にか外堀埋められてた……。

凄まじい行動力ねこの子。


「勿論費用等は氷室家で負担いたしますので。皆様には島でのバカンスをお楽しみ頂きます」


そう言って満足そうに笑うユリア。


「わたくし早速用意をいたしますのでこれで失礼しますわ。後程LINEで詳細をお知らせいたします」


「了解、予定決まったら教えて」


ユリアはいつの間にか後ろに止まっていた

リムジンに乗って帰っていった。


最近ユリアのペースに載せられまくってるな。あの子の私に対する行動はあまりにも常軌を逸してる。

でも私の事を思ってくれるのも事実で。

なんだかモヤモヤする。


心の底にあの子への信頼が強くある。

あの子が私に悪くなるような事をする筈が

ない、という思い。だから強く言えないんだよな、なんでかな。

部活でずっと一緒だったけど先輩後輩の間柄だったし、とりたててすごく仲良くなるイベントとかあった訳じゃないしなー。

なんであの子はこんなにも私に執着するんだろ。


異常なまでに。



2週間後、横浜港 ───


「先輩、此方です。この船になります。申し訳ありません。こんな小さな船しかご用意出来なくて」


ユリアが指し示した船を私たち家族が見上げていた。


「ハルカ、あんたユリアちゃんに自重しなさいって言った?」


ママが唖然とした表情をして言う。


私、そういえば自重しろって言った事なかったな……。

私たちの目の前には超大型客船が朝日を輝かせながら、燦然と停泊していた。


「パパ、こんな大きな船乗ったことないよ」


「お姉ちゃん、写メとろ写メ!」


パパとカナタは無邪気に喜んでる。私とママはそんな喜べないなー。なにしろこの船だもんな……。どうしていいかわかんないよ。


「本当はベリッシマクラスにしたかったんですが、生憎出払っておりまして。一回り小さな客船しかご用意出来なくて大変申し訳御座いません」


出払ってってハイヤーじゃないんだから。


それにしてもパパじゃないけど私もこんな大きな船見るのも乗るのも初めてだよ。

こうやって見ると大きなホテルが海の上に浮かんでるみたい。

見てるとだんだん私も楽しみになってきた。ちなみに本日の橘家はトータルコーディネートでお揃いのハーフパンツとリゾートっぽい柄のポロシャツなんだ。

ママが張り切って久しぶりの家族旅行だからって買ってきたんだよね。


「ところで皆様、本日から皆様のお世話をさせて頂く侍女をご紹介しますわ」


そう言ってユリアは後ろに控えていた4人の女性を手招きする。


「皆様から見て左から春子、夏希、秋生あきみ、美冬です。何事もこの4人にお申し付けください」


すると4人を代表して春子さんが挨拶をする。


「お初にお目にかかります皆様、わたくしたち4人にどんな事でも構いませんのでお申し付けください。必ずご要望にお応え致しますので」


4人共タイプは違うけどすごく綺麗だなー。


なんか、すごく私を見てくるような、

何でだ……


「では皆様乗船致しましょう!」


ユリアを先頭にタラップを登っていく。入ってすぐにレセプションがあって乗船手続きをする。階段を登るとそこは別世界だ。

シアターがあって色んなラウンジが、おっきいレストランがいくつもあって回って見るだけでスッゴイ楽しい!

こんな世界があるんだ、これで世界をまわったら楽しいだろうな。


よーし、楽しむぞー!いくぞー!!




氷室由利亜の客室─────


「4人共わかっていると思いますが、此度のミッション失敗は許されません。ハルカ先輩やご家族の皆様の安全が最優先になります。あなた方4人は自らの命をもってしても必ずお守りすることです。わかりましたね」


「お任せください、姫様。この命に代えましても、橘家の皆様、特にハルカ様の安全を最優先にお守りします」


4人が声を揃えて宣言する。ユリアは満足げに頷くと、


「よりにもよってが日本に来るとは。先輩達を日本から連れ出すことには成功したけれど、まだ倒す算段がついていないと言うのに」


(これでやり過ごせれば良いのだけれど)



海の香り


吹く風に夏の気配


水平線が円くひろがる


白い波濤を切り裂きながら


船が行く


積乱雲が、高くそびえる


彼方へ


どこまでも


本当に海って広い。デッキから海を見てると吸い込まれそう。底の見えない海が私を飲み込もうとしてるみたい。

その海を進むこの船がとても頼もしく思える。昨日の朝出港してすでに1日半も船の上だ。


それにしても至れり尽くせりなんだよね。

ママなんかずっと乗ってたいって言ってたなー。シアターでは今週末からロードショーの筈の話題作が見たいときに見れるし、

いつでも食事できるし。ここにいるとダメ人間になっちゃうよ。


「先輩、ここにいらっしゃったのですか」


ユリアが近づいてくる。今日は白いワンピースにつばの大きな白い帽子でいかにもお嬢様って感じのビジュだね。


「ハルカ先輩、後2時間程で到着致しますので」


「うん、降りる準備は出来てるから大丈夫だよ」


ユリアは水平線のある方向を指差しながら


「もうすぐ島が見えてくる筈です。島は氷室家の所有となっておりますから誰にも邪魔されずにゆっくり出来ますよ。色々な施設も御座いますので、退屈することはありません」


ユリアは自慢気に言うと空を見ながら気遣わしげに、


「天気、持てば良いのですけど」


そういえば天気予報では明日から雨だったな。


「大丈夫だよ。私、晴れ女だから。この間のお出掛けの時も途中から晴れたじゃん」


「確かに。ただ雨が降っても楽しめるアクティビティは幾らでも御用意しておりますので、御心配なく」


「こんな機会でもなけりゃセレブのバカンスなんか体験出来ないからね、楽しみだ!」


島に着いたら何があるんだろ。見たことのないような物がありそう。


ワクワクする!

絶対楽しむぞー!






























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