第10話

「でも正直玉入れってさー、小学校の低学年以来やってないよねー」



「普通は高校の体育祭でする種目じゃねぇよな~」




え、そうなの?


高い位置にあるカゴに玉を入れるって、結構難易度高くない?


でも確かに美鷹にある昔の体育祭の資料にも玉入れは無かったし…。


だからこそどんな競技なのか知らなかったんだけど。




「まぁなんにせよ生徒会役員が出なきゃいけないらしいし、俺たちも行こうか」




陽平にそう言われて、その場から腰を上げる。


6人揃って、カゴやら玉やらが用意されているドームの中心に移動するけれど。




「ねぇ、綾そんなので動けるの?」



「あー?どういう意味だ貧乳ブス」



「だってすでに顔赤いじゃないの」




酔ってるでしょ、それ。


そう指摘すれば、彼ははっと鼻で笑う。


そして悪戯に口角を上げて、「俺の華麗な玉入れの技を見てろよテメー」と言い放った。


玉入れに技とかあるんだろうか。




『はい、では各校準備ができたようなのでそろそろ始めます』




呼吸が整ったらしい放送委員長の声が滑らかにドームに響く。


それを聞いた優斗が「変態電話じゃなくなっちゃったー」とつまらなそうに唇を尖らせていたけれど、あえて何も言わなかった。

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