第8話

なるほど、と1人納得していれば。




『やはり実況が無いとつまらんの』




また唐突に、理事長の独白がアナウンスで流れる。


『つまらない』って。


言っちゃうんだ、それ。


いや、うん。


まぁ理事長らしくて何よりだとは思うけど。




『美鷹の放送委員長を実況役に任命する。今すぐ放送席に来るように』




そして拒否権は無い、と。


視線を彷徨わせれば、ダッシュで放送席に向かう放送委員長の男の子が目に入った。


もし今の彼の走りを計ったら、いいタイムが出るんじゃないだろうか。




「いや~、大変だねぇ」



「まだマシじゃね?俺らの時だったら絶対『2分以内厳守』っつって時間制限つけられてんぞ」




その声にばっと振り返れば、お酒片手に高みの見物を決め込んでいる奏と綾の姿。


すでにけっこうな量のお酒を飲んでいるのか、綾の肌はほんのり朱に染まっている。




「カナちゃんもリョー君も、今までどこにいたのー?」



「ん~?一之瀬と蓮ちゃんと遊んでた~」




お酒の力なのかなんなのか、奏は普段以上の色気を湛えながらゆったりと口角を上げる。


『遊んでた』という言葉にいろんな意味が含まれていそうだけど。

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