第17話

それよりほんとどうすんの、この状況。


まさか的場が参戦してくるとは思わなかったし。


あんな電話一本で素直に女装して美鷹まで来るって、紅明ではどんな恐怖政治が行われているんだろう。


僕はさすがにブラをつける勇気は無いなー。


誰に言われても断固拒否する。




「おい、このままじゃ決着つかねーだろーが」




眉間に皺を寄せながら、リョー君が吐き捨てる。


女装くらいでそんなに本気にならなくても。


できれば僕はもっと別のことで本気になってほしい。


そう例えば…。




「ただいま」




ガチャっと扉が開く音がして、みんな一斉にそちらを向く。


扉を背にして立っていたのは。




「お、おかえりー、昴君ー」




美鷹の王様。


仕事で疲れているのか、いつもより少しだけ眠そうだけど。


いや、眠そうだからこそ。




「…何やってんだ?お前ら」




不機嫌…っ!


そりゃまぁそうだろうけど!


この部屋の中の状況を見たらそんな反応になるだろうけど…っ!


なんとなく素直に説明するのも憚られ、かと言ってうまい言い訳も見つからず。


ごくりと、この場にいる誰もが息を飲む中。




「おかえり昴。今日は早かったね」




穏やかに微笑みながら、ヨウ君がいつもの調子で話しかけた。

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