第22話

にこにこ。


それでも陽平は笑顔を崩さない。


現状では優斗の方が背が高いはずなのに、陽平の方が大きく見えてしまうのは何故だ。




「おい陽平、からかうのもそのへんにしてやれ」




呆れたように、溜め息混じりで昴が陽平に進言する。


てゆうか、からかってたのか。


陽平が言うとどこまでが冗談なのか掴みづらくて困る。




「仕方ないね。優斗、もういいから天井調べるなら調べなよ」



「うー…。ヨウ君もからかうならそれっぽい態度にしてよー」



「ふふっ。優斗がどんな対応するのかと思って」



「一瞬地にひれ伏しそうになったよー」




むぅ、と唇を尖らせて頬を膨らませる優斗。


地にひれ伏しそうになるその気持ちも分からなくはない。


私だって陽平に面と向かって『頭が高い』なんて言われたら、普通にひれ伏すと思う。




「実は1番たち悪いのって陽平よね…」



「生粋のS気質だからねぇ」




ぽつりと奏に耳打ちすれば、彼も困ったように小さく笑った。


陽平のあの見た目や雰囲気に騙されたら大変なことになりそうだ。


優しい時は心底優しいくせに、いつどうやってそのS気質のスイッチが入るんだろうか。




「ま、陽平と付き合う女は大変なんじゃねぇの?」




くつりと笑って、奏はそんなことを言う。


陽平と付き合ったりしたら、手の平の上で転がされてしまいそうだ。

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