第16話

そんなことを実感しながら、私は再び言葉を紡いだ。




「一般的に見たら、間違えてるのは問題児たちのほうなのよね?」




あまりにものびのびと自由に行動している姿を見ていたら、もしかしたら自分の対応が間違えてるのかもしれないという恐ろしい考えまで浮かんでくる。


切実な私の質問に、苦笑した2人は。




「まぁ一般的にはな」



「でもまぁ、瞳ちゃんも随分染まってきてるけどね」




困ったようにそんなことを言った。




「待って、『染まってきてる』ってことは私も問題児ってこと?」



「そうなんじゃない?だって生徒会特典使って授業サボるの、当たり前になってるでしょ?」




…確かに!


あぁぁぁぁ、気付かない内に不良になってる…っ!


なんだかんだ言いながら、私も今この場にいるし。




「…慣れって怖いわね」



「本当にね。でも、」




今しか出来ないことっていうのも確かにあるから、と。


深い声で陽平がそんなことを言うから、思わず胸の奥がきゅっと締まった。


口を噤んでしまった私を励ますように、昴がぽんと私の頭に手を置く。


あぁ、やっぱり好きだな、なんて。


たったそれだけでも嫌ってくらい自覚させられる。




「瞳ちゃん」



「…なぁに?」



「どうしようもないなら、楽しめばいいんだよ」

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