こんなに月が綺麗な夜は……

 机に向かっている。正面に見えるのは窓。月光と机に置かれたスタンドがノートを淡く照らしている。


「あー……疲れた……」


……。

 ふと顔をあげ、視界に入るのは、もちろん。


「月、きれいだ……」


 いつもと変わらず一つの月。どうやら今日は満月のようだ。

「こんなに月が綺麗な夜はファミレスに行こうかな」


「外、けっこう寒いな……」

 見えるものは電柱と月、あとは夜の闇だけ。

……静かだ……。

 ふと目当ての種類の店が目に入った。


「ムーンパレス……」


 ドアには顔のついた三日月が描かれており、隣には大きく「ムーンパレス」と書かれていた。


「こんな近所に深夜もやってるファミレスがあったなんて」

 スライド式のドアを開けるとすぐ店員がでてきた。

「一名様ですね?」


 エプロンの胸元にはポケットがついており、ボールペンと一緒に入れられているのはおそらく伝票だろう。反対側には先ほどと同様の三日月のバッヂがつけられていた。


「こちらの席にどうぞ」

 通されたのは店の奥にあるテーブル席。壁を見るように座る。テーブルにはメニューとスプーン、フォークの仕舞ってある小さなバスケット。目の前の壁には魚をモチーフにしたであろう絵画が飾られている。

 しばらくすると先ほどの店員がやってきた。


「ご注文はお決まりですか?」 

「ええと……」

 とりあえず来たのだから、大層なものはいらないかな。

「ソフトクリームと……ドリンクバーをお願いします」

「ソフトクリームとドリンクバー……以上でよろしいですね?」

 店員は伝票をとりつつ確認をした。


「はい。……あっ、ちょっとすみません。ソフトクリームにエビって入っていますか?」

 

店員は面食らった様子で返す。

「……お客様……ソフトクリームに……エビが入っているか、ですか?」

「強いアレルギーなんです。念のため……」

「……入っていませんよ」

 彼女の表情は怪訝なものに変わっていた。


「注文は以上でよろしいですね?」

「はい。お願いします」

……よし、勉強しよう……。


……来ない……。忘れられてる?

……あれ……? 席、こんな感じだったっけ?


 よくよく見渡すと、絵画には魚ではなくワインが描かれていた。椅子も何か違うような気がする。


 なんか店の雰囲気も違う……。なんだこれ……。

 ひとまず店員を探そう。

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