【異世界ラーメン屋台書籍2巻コミカライズ中】テーマパークで働いたら連続殺人に巻き込まれた件。怪奇と幻想『ストレンジ・ワールド』へようこそ!
森月真冬
プロローグ 『怪物』の生まれた夜
夜の森を少女が走っていた。
年のころは十歳前後。黒く長い髪に、白いワンピースの少女だ。
辺りはミルク色の霧に覆われて、どちらへ向かっているのかさえ定かではない。
「あっ!?」
足元を木の根に取られて、少女は転んだ。
擦りむいた足をかばうように抱え、慌てて木の陰へとしゃがみこむ。
ガタガタと震えながら呟いた。
「誰か……助けて……」
少女は空を見上げる。
霞む月光の中、巨大な城の影が
きっとあそこまで行けば、誰かがいるに違いない。
恐怖にわななく身体を叱咤し、なんとか立ち上がる。
そして、痛む足を引きずるようにして、のろのろと歩きはじめた。
しかし、その背後。霧の中から、音もなく怪物が姿を現す。
逃げ切れないほど近く……その息づかいを頭上に感じて、少女は振り向かずに尋ねた。
「どうして……?」
「君には、顔がないから」
言葉の意味がわからずに、少女は確かめる様に自分の頬を指でなぞった。
怪物は、ゆっくりと少女の首にその手を回す。
硬く、鋭い爪が、柔肌へと食い込んだ。
そして、息遣いを感じるように、そっと……喉笛を、引き裂いた。
白い霧を、鮮血が真っ赤に染め上げる。
少女の身体から力が抜けて、くず折れるようにその場に倒れた。
やがて怪物は、絶命した少女の身体を引き寄せ、じっと顔を見つめる。
それからその爪を振り上げて、思い切り突き立てた。
すべてが終わると怪物は、満足そうに笑い、頷いて立ち上がる。
後には、無残にも半顔を裂かれた、いたいけな少女の死体が残るだけだった。
さわさわと風が木々をなでる音の中、霧が徐々に晴れていく。
……どのくらい時間がたったのだろうか。
真っ黒な森の中で、不意に少女の身体が震えた。
そして、少女は立ち上がる。
今度は、彼女が『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます