第11幕-プリクラと手紙交換-

中2の夏。


日曜にマリカたちとグループでプリクラを撮りに行った場面。


駅前のゲームセンター。

見覚えのある光景に少しドキッとした。


思い出したくない記憶。

でも、たしかに自分の中にあった“あの頃”だ。


スクリーンからは夏真っ盛りの暑さが伝わってくる。

派手なキャミソールやミュールなどを身に纏った集団が映る。


遊ぶメンバーはいつも決まっていた。

マリカ、ミサキ、アユミ、そしてユイナ。


でも、1人足りないのにユイナが気付く。


『マナミは?』


目を逸らし、誰も答えない。

少し茶色くした髪をなびかせたマリカがさらっと言った。


『誘ってない(笑)

あの子、ユウキ先輩に媚び売っててムカついたから』


『あーみた。

声超ぶりっ子だったよねー!!』


『うわっ、最悪』


顔を歪め、口々に賛同するミサキとアユミ。


ユイナは黙って、でも、何も言えずにいた。自分に言われたわけじゃないけど、心の奥がチクっとして吐きそうになった。


翌日。


教室で、マリカがユイナに手紙を渡す。


『ねーねー、これマナミに渡して?』


何か嫌な笑み。


『うん…』と受け取ったユイナ


…けど、まるで読めと言ってるかのような剥き出しの文章が見える


「Dear→マナミ

昨日、あんた抜きで遊んだんだ~

みんな楽しんでたよ?

輪の空気乱すやつって

マジで無理だから(笑)

From→マナミ・アユミ・ミサキ・ユイナ」


ユイナの指が震えた。自分の名前もその手紙の文中に出ている。


(ユイナもさ、なんも言わないけど、

けっこう思ってるよね~?一緒で良かったわ)


そう言われたみたいな感覚に陥る。


——自分の“沈黙”が、同意として使われてる。



————



スクリーンに映るのは、教室の窓辺。

ユイナがその手紙を読み終えて、膝の上でそっと折り直している場面。


「渡しましたか?」


そっとソウマが尋ねる。

ユイナは首を振る。


「できなかった。

…けど、返すことも、できなかった。

あの手紙を見たとき、いちばん嫌だったのは、黙って見て見ぬふりをしてる自分だった。」


ユイナは深く息を吐いた。


「本当に胸が痛い。

みたくない…恥ずかしい。

醜い自分が嫌になる。」


「まさに思春期女子のドロドロそのものですね。」


半ば呆れたような声でソウマが言う。


「なんで、こんな嫌な記憶まで残ってるのよ」


「完璧な人間なんていません。

そして、残念ながら過去は変えられません。でも――過去の痛みが、未来の選択を変えるなら、それは“意味のある傷”です」


ソウマが続ける。


「あなたはその後、“誰かを笑う場にいないこと”を選び続けた」


「うん。小さなことだけど、あれ以来ずっと、私はそういう選択をしたつもり。完璧じゃなくても…“あの時の自分"より、少しだけまっすぐでいたいって思ってた」


ソウマは微笑みながら言った。


「あのときの痛みが、あなたを少しだけ優しくした。」

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