He'll be back... （ヤツが戻ってくる．．．）

青山翠雲

　「美樹、おめでとう～！ますます幸せになっちゃってねー！」

　「健三＆美樹ちゃん、こっち向いて！おー、どの角度でも絵になる！この幸せカップルめ～！」

　佐々木健三＆美樹の結婚式では、誰もがその結婚を見て、結ばれるべくして結ばれた二人に対して嘆息を漏らし、羨望とも嫉妬ともつかぬ視線を送っていた。

　佐々木健三はキリッとした顔立ちで、しかも筋肉隆々の外資系証券会社に勤める28歳のイケメン。美樹は、音大でピアノを専攻していた色白の顔立ちのはっきりした美人、息抜きにやっていたという水泳のせいか、出るべきところは出て締まっているべきウェストは両の手で掴めるのではないかというほどの見事なプロポーション。とりわけ、その指や脚など、露出しているところの美しさは形容する言葉が見つからないほどで、例えて言うなら、その指や脚線美しか写真に写っておらずとも、「この人は美人だ」と強い推量が働くと言えば伝わるだろうか。そんな二人がそれぞれアップするSNSの写真は、どれも絵になるものばかりで、まばゆいばかりの光を放っていた。

　そんな二人の生活は、順風満帆そのものに思えたが、小さな歯車が今一つ上手く嚙み合わない箇所があった。それは、住まいに関する運みたいなものであった。