第56話 明かされる秘密(2)
「あの、お姉様。実は……」
説明しようとしたのに、セレステは私の言葉を遮った。
王宮前にいる誰もが聞こえるであろう大きな声で、セレステは告げる!
「ルナリアは闇の巫女よ!」
セレステは私に指を突きつけ、得意げな顔をした。
「恐ろしい!」
「闇の巫女め!」
僧兵たちが騒ぐけど、他の人たちは静かだった。
それに気づいたセレステが首をかしげた。
「私が言った意味がわからなかったのかしら?」
セレステはそう呟いて、ふたたび大きな声で言った。
「ルナリアは忌まわしい闇の巫女であることを隠して、ここから逃げるつもりでいるわ!」
僧兵たちが槍を私に向けた瞬間、レジェスとルオンが剣を抜いた。
レジェスとルオンの護衛が駆けつけるまでもなく、簡単に地面に転がされてしまった。
「レジェス様、ルオン様! どうして、闇の巫女をかばうのですか? 私はこの目で見ました! ルナリアが闇を作り出したところを!」
「これのことですか?」
薄い闇は涼しい日陰を作り、荷物を積み込んでいた人たちが喜んだ。
「おお! 涼しい!」
「これが闇の力! 助かりますなぁ」
アギラカリサの巫女の力を継承したおかげで、他の力も使えるようになった。
風を操り、さわやかな風を送る。
「むう! 昼寝にはちょうどいいですなぁ」
「昼寝用の椅子を持ってきて、休みたいくらいの心地いい風!」
年老いた大臣たちの昼寝タイムのために日陰を作ったわけではなかったけど、みんなに喜んでもらえたのは嬉しい。
「なかなか便利だな」
「そうですね。便利な力です」
レジェスも興味津々で、ルオンとスサナも感心していた。
「ほぉー、これが巫女の力か」
「こうやって使うのですね。王宮にずっといたので、力を使う機会がありませんでした。それに、使っても王の命令で力を奪うくらいしか……」
動揺しているセレステに、お父様が説明する。
「セレステ。ルナリアは闇の巫女ではない。アギラカリサの巫女となったのだ」
「アギラカリサの巫女!?」
「それだけではない。ルナリアはレジェス殿下の妃となった」
「お父様! 私がレジェス様の妃になるのではなかったのですか?」
お父様は黙って首を横に振った。
お母様はセレステを強く責めた。
「だから、言ったでしょう! 王位継承権を放棄せず、女王になっていれば、こんなことにならなかったのですよ! 結婚もできず、女王にもなれず……なんて情けない……」
「ルナリアがいなくなれば、女王になる人間がいないわ。私しか女王になれない……」
「なれませんよ。次の王はすでに決まっています」
セレステの言葉を遮ったのは、シモン先生だった。
「王になるのはフリアン様です」
シモン先生が告げ、お父様がうなずく。
「セレステ。誰もが王になれるわけではない。フリアンはルナリアとともに各地を巡り、民の生活を豊かにしてくれた」
「私は光の巫女として、王家に尽くしたでしょう!?」
「王が尽くすべきは、王家でなく民なのだ」
お父様に政治の才能はなかったけど、国民のことはよく考えていたと思う。
「これで、自分の力がわかっただろう? お前は光の巫女として、神殿で穏やかに暮らすのが一番だ」
青ざめた顔でセレステは私を見る。
「ルナリアがいなければよかったのに」
セレステが本心を口にした。
今まで、隠し続けていたセレステの本性が見えた気がした。
セレステは身を翻し、神殿のほうへ走っていった。
まるで逃げるようにして――シモン先生がレジェスに耳打ちする。
「気をつけてください。セレステ様は常に自分が一番でないと気が済まない方。早くアギラカリサへ向かったほうがよろしいかと」
なにをたくらんでいるかわからない。
これで終わりではないと、シモン先生は考えているようだった。
「忠告、感謝する。出発するぞ!」
レジェスの声に旅の隊列が動き出す。
それでもまだ、地面に転がっていた僧兵たちが、私に敵意を向けていた。
「闇の巫女め」
「光の女神の罰を受けるがいい!」
光の巫女の立場を利用し、セレステはなにかたくらんでいるのか、僧兵たちの言葉が出発してからも気になっていた。
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