第1章 はじまり
真っ暗な暗闇とは対照的に、空を見上げれば眩しいくらいの月が輝いている。
黄金色をした月は、地上を照らすように輝いていて、その月明かりはある場所へ導かれるように光が降り注いでいた。
その場所は人通りの少ない道。
細々と建つ電柱に設置されてある小さな点灯が微かに光っている。
まるで未知とも言える場所から、何なら慌ただしい足音が響いてくる。
「はぁ、はぁ、はぁ、だ、だれ、誰か助けてください!!」
息が途切れ途切れになりながらも、必死になって呼ぶ声が聞こえてくる。
叫びすぎたせいか、声は既に掠れていて弱々しくなっていた。
誰かからか逃げるように必死になって走る人影
その後ろからはまるて楽しむように、逃げる人影の後をゆっくりと歩いていた。
「どうして?どうして誰もいないの?普段は人通りの多い場所なの。どうなっているの。」
走っているのは制服姿の女の子。
髪の毛は走ったせいか乱れに乱れていて、制服もボロボロに乱れ今にも倒れそうだ。
パニックになりながらも、辺りを一生懸命に見渡している。
あるのは、真っ暗な暗い道と電柱に設置されてある小さな光のみ。
その風景に思わず顔を引き攣らせている。
「な、なんなの?とにかく逃げなきゃ。アイツが来る!!」
体力は既に限界を超えていて、縺れそうになりながらも走っている。
それでもなんとか走ろうとした時に力尽きたのか転んでしまう。
転んだ女の子の後ろからは、追いかけてきた者が足を止める。
【……………………遊びは終わりかな?お嬢さん。】
その者は、倒れた女の子を見下ろしている。
「誰よ、貴方!!こんな事は犯罪なの。捕まったら刑務所行きなんだから。」
怯えて震えながらも、なんとか一生懸命に声をだしていた。
女の子の身体は、恐怖からか両手で強く抱きしめていた。
それをみた者はふっと唇を歪ませる。
【この娘だろうか。あの方が欲しがっている例の女の子とは。】
怯えている女の子をちらりと見つつ、ふむと顎に手を添えて考えている。
【年齢的に考えれば当てはまるがなにしろ情報が無い。アイツのおかげでな!クソッ、忌々しい奴だ。しかし、関わっているとは驚いたが。まあいい。おい、そこの女!!】
ふと、倒れて怯えている女の子に呼びかける。
「……………………な、なんでしょうか?お願いします、助けてください。お金ならありますから。」
【チっ。】
ガタカタと身体を震わせながら懇願する女の子を見て、忌々しく舌打ちをする。
【まあ、怯えるのも仕方がないか。まだ目醒める前かもしれないしな。それとも段階か。】
再び顎に手を添えて考えていた。
「な、なんなのよ。まだ目醒める前とかって、いったい何の話をしているの?」
完全にパニックになっている女の子は恐怖から
声を荒げてしまう。
【はぁ、これだから女は仕方がない。あの方に確認してもらうのが一番早いな。お嬢さん、悪いけど連れて行くから。あ!残念だけど拒否権はないから。】
ニィーと唇を横に広げるようにして微笑む。
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