ダンジョン・コアが俺の隣を歩いてる!?~俺だけTSしちゃうダンジョンで拾ったSSS級美少女エルフが規格外すぎるんだが~
久元はじめ
第1話 俺だけTSしちゃうダンジョンで
『10月14日。本日のダンジョン浸食率をお知らせします。現在、この一帯の浸食率は52%です。ダンジョンの拡張にご注意ください。繰り返します。現在――……』
「なあ、やっぱりやめない?」
夕方の放送が鳴り響く中、目の前にあるダンジョン領域を前にして、俺――
「ここまで来て何言ってるんだよ! 遠野!」
「もう中に入るだけだろ?」
「えー……」
残念ながら俺の言葉は全く響かなかったらしい。
二人とも一切こちらを見る事もせず、待ちきれないという表情で顔を輝かせている。普通の高校二年生の男子にとってはダンジョンは憧れの場所だ。仕方がないのかもしれない。
「これから探索者になると思うと、流石に気分が上がるな!」
「俺は強くなって、配信者と繋がるぞ!」
今、俺たちの後ろには人が住んでいない空き家だけの住宅街が広がっていて、そして一歩進んだ先にはそこにあるはずのない森が広がっていた。
住宅街が突然途切れて森になるなんて普通ではあり得ない。
そう、ここから先は普通ではない。
異界――ダンジョン領域であることを示すように、目の前の空間は時折歪み、ノイズが走っていた。
「好きだよなぁ、ダンジョン配信。何人推しがいるんだよ」
「〝聖騎士〟とか〝忌み名奏者〟とか……あ、配信者以外だと〝お金姫〟にも会ってみたいな!」
「誰それ」
「知らないのか!? この辺で活動してるらしいんだけど、配信はしてないからあんまり有名じゃないんだ。けど、めっちゃ可愛いんだぜ。口と鼻は小さめなのに、目は大きくてクリッとしててさ、お人形って感じ。めっちゃ金にがめついらしいけど」
「それ……推せるのか?」
二人は俺を放っておいて、わいわいと盛り上がっている。
……がめつくて悪かったな。
「推せるよ! まあ今度教えてやるよ。とにかく、入ろうぜ」
「よし、せーので一緒に行こう。せーのっ!」
タイミングを合わせた二人が大きな一歩を踏み出し、境界線を越えていく。
二人が触れた空間がたわむ。その体はダンジョン領域に入った先から輝きだし、そしてカタチが変わった。
「おー!!」
「すげぇ!!」
すごいすごいと、まるで小学生のようにはしゃぐ男子高校生。
一人は犬の耳と尻尾が生えた獣人に。一人は額に角が生えた鬼人の姿に変わっていた。服装も学ラン姿から、麻で出来た簡素な服に変わっている。
どうやら無事に
「これが、〝幻装〟……」
ダンジョンに入ると、人は現実とは異なる姿を纏う。何故そんなことが起こるのかと言えば、戦うための姿を神から授かるから、というのが通説だ。
人によっては全く姿の変わらないこともあるそうで、神様は気まぐれで不平等だ。心底憎たらしい。
「おーい。今日はもういいだろ」
「何言ってるんだ、遠野も入ろうぜ!」
「あー、いや、俺は今日はいいかな……」
正直、入りたくない。というか、俺が〝幻装〟した姿を見られたくない。
そもそも、「ちょっと近くまで行ってみる」だけだったはずなのに、いつの間に中に入ることになったのか。こんな事ならついてこなければよかった。
「早く戻らないと、
俺を置いたまま奥に進んでいく二人。彼らが帰る気持ちにならないかと、無駄に脅しをかけてみる。
「いやいや、こんな端っこに出ないだろ」
「だよなぁ。怖がり過ぎだって」
ちっ、流石にそれぐらいは知っていたか……。そう、普通はこんなダンジョンの端まで魔物は来ない。
――――はずだった。
「――え?」
ガザガザと草木が揺れ、奥からナニカが姿を現す。
緑色の矮躯。簡素な腰巻に、手には棍棒。ダンジョンではよく見る魔物。
「ゴブリンだ! 戻ってこい!」
出てきたのは二体のゴブリン。決して強くはないが、初めてダンジョンに入った人間が戦える相手ではない。
「早く! こっちに!!」
俺は必死になって二人に呼びかけた。
境界線から出れば魔物は追って来ない。だからちょっと後ろに下がるだけで、二人は助かる。
「え……?」
「あ……、ぁ」
それなのに、突然の出来事に二人はフリーズして、動かない。
「くそっ!」
どうする?
いや、迷っている暇はない。行くしか――
「逃げてください!」
一歩を踏み出そうとしたとき、高い声が響き渡った。
茂みの奥から突然現れた金髪の女性が、友人たちとゴブリンたちとの間に割って入る。
探索者か? だが、武器を持ってないし、まともな防具すら身に纏っていない。
「早く行って!!」
「う、わぁぁあああ!」
「おい! 待てよ!」
彼女の強い言葉に再起動を果たしたのか、獣人が転びかけながらもダンジョンから抜け出し、鬼人も後に続いた。
元の人間の姿に戻った二人が、そのまま俺を置き去りにして走って行ってしまう。
「もう大丈夫だ! アンタも――」
女性に視線を戻し「逃げてくれ」と言おうとしたところで、
「きゃっ!」
彼女が小さな悲鳴を上げた。
棍棒を振り上げながら踊りかかる二体のゴブリン。
ふらりと、女性の体が倒れる。
「――――っ」
もう躊躇う心はなかった。
俺はダンジョンに入った。
体が輝き、変わっていく。
高校生らしい黒髪短髪は白い長髪へ。
平均的な十七歳男子の体が縮んでいき、手足は細く華奢に。
俺の肉体は少年から、少女へと切り替わった。
「はっ――!」
ダンジョンに突入した勢いのまま一息でゴブリンに近づき、一体の左頬を殴りつける。
吹っ飛んでいく姿を最後まで見ず、もう一体の頭を蹴り抜いた。
それで終わり。命を失ったゴブリンたちは、すぐさま黒い塵となって消えていく。
「おい、大丈夫か!?」
一息つく間もなく倒れている女性に駆け寄り、そこで俺は言葉を失った。
「――――」
綺麗だ。
黄金に輝く金髪。長いまつげ、すっと筋の通った鼻梁、透き通るような白い肌。
そして、さらさらした金髪の隙間からのぞく、特徴的な少しとがった耳。
「……エルフだ」
初めて実物を見た。エルフは〝幻装〟する人間がめったにいない希少な種族。画面越しで見たことはあったし、エルフって綺麗だよなとは思っていた。
けれど、実物の破壊力はすさまじく、俺はしばらくの間呼吸を忘れてしまう。
何故、エルフがこんな所にいるのか。
それも身に着けているのは白いワンピースだけでとても探索者の装備には見えない。
怪我をしているようには見えず、気絶しているだけらしい。エルフの女性――いや、恐らくは同年代の少女は目を瞑ったまま起き上がる気配が無かった。
「おい、おい!」
肩をゆすってみたが反応がない。
どうしよう。ここには置いていけない。どこに連れていくべきか。
「……仕方がない」
とりあえずダンジョンの外に運んだ方がいいだろう。
そう思った俺は、彼女を横抱きにしてダンジョンの外に出た。
体が輝き、元の少年の体に戻る。
「え……?」
だが少女は、
「嘘……だろ?」
エルフのままだ……。
人間に戻らない。ダンジョンの外に出ても人間の姿にならない。つまり、それは元々この姿であるということで。
「まさか」
聞いたことがある。昔、ダンジョンが現れた頃は、こういうことがあった、と。
「異世界人……」
人間ではない、本当の異種族。
「ええええええ!?」
この日、俺はダンジョンで異世界人を拾ってしまった。
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