たった一言、それだけが。
あしゃる
世迷言
ホントはずっと甘えたくて、でも甘え方か分からなくて、頭がぐちゃぐちゃになっていって、ぐずぐずに溶けて、泥にまみれてた時、君が言ってくれたんだ。「来い、受け止めてやる」って。その言葉だけで、私は救われたような気がした。ううん、本当に救われたんだと思う。だから、つい、差し伸べてくれた手を取るのを忘れてしまって、そのまま沈んでって、助けてくれようとした君も、一緒に沈んで。
……ごめん、ごめんね。私はやっぱり、救われちゃいけなかったんだ、きっと。あきらめきれなかったからみっともなくあがいて、それで今、君と這いずって。君だって苦しいはずなのに、こんな思いしたいわけないのに、私、私今、喜んじゃった。喜んじゃったの。君が、私と同じようになった気がして。嬉しくなっちゃった。ごめん、最低だよね、あの日、私が泣いたりなんかしなかったらこんなことにならずに済んだのに。優しい君の前で泣いたりしたら、心配してくれるってわかってたはずなのに、なのに、私は……。
分かってて全部やったの、君のやさしさに寄生しようとしたの。最低なんだよ、最低なんだ、ああ、そうだ、私は救われない、求めちゃいけない、そうやって生きてればよかったのに、なんで、なんで見つけたの、何で私のこと見つけたの!?君は、そうやっていろんな人を掬ってきたんでしょ、皆いい人だったんでしょ。私なんかに目をつけられて、引きずりおろされて、ああ、ア。かわいそう、ごめんね、ごめんね、全部私のせいだ、私のせいなんだよ、私がいなければ。こんなキチガイ、かかわらずに済んだのに……。
ああ。あ、あは、……優しい君だから、こんなことも赦して仕舞うのかな。それとも、地獄に押し込めて呪うかな。呪ってくれよ。私は、地獄行きだから、せめて、土産に君の呪いを。多分、君は浄土へ行けるから。蜘蛛の糸なんか食べちまえ。垂らしたら最期、こちらまで引きずり込むのが地獄なんだ。……ア、ああああ。どっか行ってくれ、もう、今!どっかいけよ、もう見たくない!!消えて仕舞え、消えろ、消えろ!!なあ、頼むから消えてくれ、消えてほしい。こ。殺せないから。私には、君が殺せないから、だから。消えてくれ、いなくなってくれ、どうか、どうか、お願いだ……。
ぴかぴか光る眼も、ぐつぐつする心臓も、全てが目障りだ。きっと私は、君が嫌いだ。きっと私は、欲しがりだったんだ。君が私に持ってないものを持ってるから。死んだ魚の目は何も映さなかったんだ。紙粘土の肌は醜悪を包んでただけなんだ。つま先から、爪先から、零れ落ちて。ぼこぼこと沸騰した黒いもので、ほら、今にも君を。君を飲み込んで、骨までしゃぶって仕舞えたら。
一緒になりたかっただけなのに。
頼んだら、君が与えてくれそうだったから。
全部全部、ただの嫉妬なんだ。
忘れてください。
地獄人の、世迷言で御座います。
地獄で嘯く、幻の話。
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