デビルとぬいぐるみ🐰

夢月みつき

前編「デビルとぬいぐるみ」

 🐰登場人物紹介🐰


 ・城山しろやま いちご

 小学一年生の女の子、祖父母とうさぎのぬいぐるみが好き。


 城山しろやま いちご(AIイラスト)

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818622174731528336


・ぬいぐるみ?

 ★☆∴─────────────────────────∴★☆


 この話は一人の少女と悪魔の物語。

 ここは東京都内のとある「スカイパレス」と言う名のマンションの一室。


 ここには六歳の女の子、城山いちごが祖父母と一緒に住んでいた。

 彼女は身体が弱く両親が共働きの為、父方の祖父母の家で療養している。

 いちごはツインテールの可愛い子で祖父と祖母が大好きだ。


 彼女は、祖父に買って貰った可愛いうさぎのぬいぐるみを大切にしていて、起きている時も寝る時もいつも一緒だった。


 しかし、一年生になってから、いちごはクラスメイトの男子にいじめられて帰ってくるようになった。


「今日もいじめられちゃった……。だけど、お爺ちゃんとお婆ちゃんには言えないよ」


 いちごをいじめている男子三人の、自分に向ける酷い言葉や、あの何とも言えない悪魔のような表情、肌で感じる息の詰まるような空気感。

 忘れようと思っても、忘れられない。この記憶と体感は毎日、いじめを受ける度にいちごの身体と心に蓄積されて行くのだ。


 自分がいじめられている時のことを思い出すと、小さな身体が小刻みに震えて来る。

 涙か自然に溢れて来て、胸が押し潰されるように苦しくなる。


 いちごは、ふさぎ込んで涙を浮かべながら、うさぎのぬいぐるみを抱くとベッドにゴロリと横になった。




 🐰




 まどろみの中、いちごは不思議な夢を見た。


『いちご、いちご……』


 うさぎのぬいぐるみの耳と腕がぴくりびくりと動く。


『いちご、起きろ』


 ぬいぐるみの目がパチパチと瞬きをする。


『いちご……お前このままで』


 うさぎのぬいぐるみの足がパタパタとキックする。


『……本当に良いのか?』


「なぁに? 誰が呼んでるの。 もう疲れたよ。眠らせて」


『お・き・ろ! ノロマ!』


 耳元で大きな声で呼ばれて、いちごはびっくりして飛び起きた。


「なにっ!? うるさいっっ!!」


 いちごが声のした方を見ると、うさぎのぬいぐるみがもぞもぞ動いていた。


「きゃっ! ぬいぐるみが動いてる。でも、そっか、私まだ、夢の中なのね」

 と彼女は再び、横になろうとした。


 その時、ぬいぐるみがベチンといちごの頬をぶった。

 もちろん、綿百パーセントのぬいぐるみの手なので、もふもふで全然、痛くなかったが。


『寝るな~~! こっちを見ろ!』


「えっ、夢じゃないの? 私のうさぎが動いてしゃべってる!? しかも可愛げがない」


 怖い。これはどういうこと? いちごは頬をつねると、ジンと痛みが走った。


「痛い、夢じゃない」


『よしよし、やっと気づいたな。ねぼすけめ』


 うさぎのぬいぐるみは満足そうに腕組みをすると、いちごに向かって話しかけて来た。


「まずは、おれはお前のぬいぐるみその物ではない。おれは悪魔デメシス! お前の願いを叶える為にぬいぐるみの身体を借りている」


「ええっ、本当に悪魔なのっ! 悪魔って悪い人じゃない」


 いちごは「ヒエ~」と両手を頬に当てて目を丸くしている。

 悪魔はその様子を見て不敵ににやりと笑った。


「そうさ、おれがお前の為にいじめている奴に復讐してやる。そうすれば、お前もいじめられなくなるし、万々ばんばんざいだろ?」


「でも、あんたは悪魔なんでしょ。復讐なんてしなくていいよ。どうなるか分からなくて怖いし、いじめられたら辛いのは私が一番、良く知ってる」


 デメシスはきょとんとすると、間を置いた後にいちごの思いやりに感心しながら一声唸ひとこえうなった。


「ふぅん、お前さ……本当に優しいんだな。いつも、ぬいぐるみの中から見てたんだぜ」


「――分かった。お前の嫌がることはしないよ、報酬の魂も取らない。魂を取らないでいてやるなんて、こんな出血大サービス、滅多にないんだからな!」


 悪魔デメシスは口を尖らせて、頬を染めながらいちごの頬をぺちっと叩いた。


『でも、お前はいじめられっぱなしで良いのかよ。本当に爺さん、婆さんにも言わないつもりか?』


「うん、私もいじめられるのは本当に辛いよ。でも、同じ目に遭わせるのはもっと、辛いんだ。悪魔さんごめんね?」


 いちごは痛々しく健気な表情でデメシスに微笑みかけた。


『そうか』





 後編へ続きます。

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