第24話


ユキナの口元はまるで糸で引っ張られたように無理やり笑っていた。


それに合わせるようにましろちゃんも――

同じように口角を引き上げていた。



「……っ」



頭が真っ白になった。



全身を襲う、理解不能な感覚。


これはユキナがカメラに“気づいて”見せている笑顔なんだろうか?


でも――“あの人形”もこっちを見ている――?



理解が追いつかない。


けれどひとつだけわかる。



これはもう、普通じゃない。



限界だった。



「……すみません、俺……早退させてください!!」


レンは思わず声を張り上げていた。


驚いた同僚たちが振り返るが構っている余裕などない。



上司の呼び止めも無視し、デスクにバッグを放り込んでそのまま職場を飛び出した。

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