第12話 狂信者
ドアが開くと青いツナギを着た5人の男女が降りてくる。ツナギの背中にもウインクして愛想を振りまく豚が描かれていた。男女は
「泰斗さま、お待たせいたしました」
「ああ……」
体格のよい男が告げると泰斗は頷き返し、今度はハイエースの車窓をコンコンと叩く。それを合図にして春馬たちは全員が車外へ出た。そのなかには
「それでは、襲撃計画をご説明いたします」
泰斗はスクエアタイプの黒縁眼鏡をクイッと中指で上げた。
「
泰斗が尋ねると春馬は恐る恐る手を上げた。
「あ、あの……」
「春馬君、何ですか?」
「僕たちにはコレがありますけど……泰斗さんたちは大丈夫ですか?」
春馬はネームホルダーを差し出してみせる。とたんに、泰斗の表情が不機嫌なものへと変わった。
「
「わかりました……」
「では、我々
「わかりました。ボクたちもすぐに向かいますね」
「キング、何かありましたらすぐにご連絡を」
泰斗は一礼すると清掃業者に
× × ×
「それではボクたちもそろそろ参りましょうか~」
泰斗たちが立ち去ると臣は軽く背伸びをしながら周囲を見回した。
「今度はそなたも一緒じゃ。寂しい思いはさせぬ。もうすぐ涼に会えるぞ」
「キュー!!」
──きっと、小夜さんは『空き教室の
春馬は漠然とそんなことを思った。小夜には優しいところもあるが、寛と同じで苛烈なところもある。
──大切な恋人を攫われて、小夜さんが黙っているはずがない。
小夜が歩き始めると春馬は汗で蒸れたコルセットを少し緩め、深呼吸をしてからみんなの背中を追いかけた。
× × ×
裏口へ向かう泰斗は歩きながらスマホを取り出して
「これから
「ああ、わかった。俺のかわりにキングをよろしく頼む。もしものときは……」
寛の
「キングの盾になって死ね」
寛は淡々とした口調で業務的に覚悟を
「はい。わかりました」
泰斗は暗い声で確固たる決意を示す。今の泰斗は寛を盲目的に信じる狂信者だった。やり取りが終わるとスマホをスーツの内ポケットへしまいこみ、部下たちへも決起を呼びかける。
「いいか。
「「「もちろんです、泰斗さま」」」
泰斗の後ろでは部下たちが粛々と答えていた。
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