第2話 出会いと便意は唐突に

見た目は普通のビル。ところどころ朽ちており、クラックが入りかなり年数が経っているビル…と言いたいが、常人ならばその場で嘔吐するような場所。

悪意と殺意、無造作にばら撒かれる邪なエネルギーには普通のもんらは耐えられないだろう。


バタバタバタ………!!!

ドンッ!!!


「リーダー!!!先程UFO…うおっ!!!」


1つ目の異星人が軋む廊下を走り勢いよくドアを開けた。

その瞬間目の前、ほんの数cm離れたの間隔でダーツの矢が壁に突き刺さる。

矢を投げた正体はどうやらご立腹のようである。


「ノックもせずに入ってくんなつってるよなぁ?殺されてぇのかテメェ。」 


見た目は真っ白な丸顔、薄汚い臼歯が羅列しており目は窪み血走っている。

海苔のような髪をユラユラと揺らし貧乏揺すりをするリーダーと呼ばれる男。

この星を仕切っている宇宙ギャングである。


「い、いや…普通に着陸だったらわかるんですけど、不時着でして…。それに2隻も…。ぎ、銀河政府の威嚇射撃的なものかと…。」 


「あ?んなわけねぇだろぉがボケ。なんでこんなクソの掃き溜めみてぇなゴミ惑星にわざわざそいつらが面出すんだよ。ここに来るって事はヤクに決まってんだろ。」  


「ちったぁその便所のすみっこのクソレベルの小せえ脳みそ働かせろや。幼稚園かテメェは。」


1つ目の異星人の胸ぐらを掴み、さっさとヤク売りに行けやとまくし立てる。

しかしその後ろに居た数人のうち、髪がピンピンに尖っている異星人が口を開く。


「それだったらもうワーウルフのガキが向かった。アイツは仕事早いから助かるぜ。」


リーダーはそうかと応えこめかみの血管を沈めつつ、胸ぐらを離す。

しかしどうやらまだ1つ目に用があるらしい。


「お前さっき俺のこと【リーダー】つったよな?」


「え、は…はい。」


ザンッッッ!!!


…………………


ゴトッ…ゴロゴロ…


「呼ぶ時は【ボス】って言わなきゃ〜。辞めてよねぇ〜。今でも部下少ないんだからさぁ〜。悲しくなっちゃうよ〜。」


笑いながら切断した頭部をボールのごとく蹴り上げる。

窓ガラスを突き破り頭部は下に落下していった。

リーダーって呼ばれるの嫌なんだってさ。


それを見ていた数人の部下は腹をかかえて笑っていた。

中にはドン引きして一刻も早くコイツから離れたいと思ったメンバーも居たが、ボスのやる事は正義・絶対なのだ。


「そろそろワーウルフのクソガキの皮、剥ぎ時だよなぁ〜?戻ってきたら褒美に剥いでやるか。」


クソみたいなビルに笑いが響く。





「いやぁ〜、助かりましたわ!ありがとうござんます!」


瓦礫に腰掛けお菓子を頬張る少年。

ちんことキンタマが輝いていた少年である。

瞳はエメラルドグリーンで美しく、中性的な顔立ちをしている。

しかし、銀之助から貰ったタバコ(KENT)を吸っているから口は臭い。


「兄ちゃんも不時着と来たかぁ。大変やのぉ。にしても関西弁喋るって、地球人なんか?」


「いや…それがなんも覚えてなくて。地球…て聞いたことも行ったこともないんすけど、なんか…こう、懐かしいというか…不思議な響きですわ。」


少年が言うには何も覚えておらず、最後の記憶は週刊誌のスケベ特集を開いたところで終わっている。

そこで隕石に衝突。つまりはよそ見運転。

色々な意味で終わっている。


「異星人もドスケベなんやな。ええ事や。」


笑顔で頷く銀之助。

何がいい事なのかわからないが、色々と話をして意気投合といったところである。


「兄ちゃん、名前もわからんのか。」


「すんません、それも覚えてないんですわ…。あ、おおきに!」


タバコが2本目に入る。

名前、住所、種族、仕事、年齢、何も覚えていない少年はこれからどうするつもりなのだろうか。


「ほな名前決めてええかの?」


「???」


「パルム、ってのはどうやろか。」


ケツのポケットから袋を取り出す。

森永のアイス、PARMである。

とはいえどう見てもドロドロに溶けており原型を留めていない。

これはもはやアイスでもなんでもない。

ケツのポケットに入れているのも信じられない。

なんなんだろうかこの男は。


「言うてくれるやんけナレーションさんよ。で、どうやろ?安直すぎるかの。好きなんやこのアイス。」


「ええですやん!ほなその名前いただきますね!」


笑い合う2人を見て、レットはどこか羨ましそうな顔をしている。

それに気づいた銀之助はレットにも持ってきたお菓子を振る舞った。

パルム曰く、どうやら銀之助とは初対面のはずであるもののどこか懐かしく昔からの知人に思えるとのこと。それは銀之助も同じであった。

しかし、ここでその思いに耽るのも違う。

兎に角、ここを脱出し警察に連絡を取らなければならない。言わずもがな、パルムのUFOは墜落時に粉々になって使い物にならない。

パルムは愛車を泣きながら撫で、最後の別れを告げ歩き始めた。

目的はアジトであるにも関わらず、平気な顔をして歩く。

肝っ玉がデカいのか、世間知らずすぎるだけなのか。


途中までは無言であった3人。

そこで唐突に口を開いたレット。


「僕…ワーウルフって種族で、良くも悪くも有名なんです。」


「ワーウルフって言ったら毛並みが美しい言うて有名やもんな。レットくんもイケメンやし、一族みんな美男美女揃いやからの!」


「あはは、ありがとうございます。でもその反面…。」


「毛皮狩り、か。」 


頷くレット。

昔は栄えていたものの、人の心を持たない異星人たちの手によって毛皮狩りが横行。

銀河政府にも訴えたが動きがあまりにも遅く、一族は宇宙に散り散りになってしまったのだ。

もはや絶滅危惧種。レアな一族となった。

パルムも真剣な顔をしつつ、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

パルムもどこの種族かはわからないが、人の心はあるらしい。

もしかしたらプレアデス星人かも知れないとレットは先程言っていたが、それを調べるのもまずはここからの脱出である。

レットは警察に通報した後は、おそらく少年院行きなので親とは暮らせないだろう。しかし、警察に言えばどうにか両親を助けて貰えるかも知れない。

そこに僅かな希望を抱くしかない。

2人はどうするんですか?という問いに答える間もなく、アジト付近まで来た。

とはいえ1kmは離れている。


「ここで待ってて下さい。UFOまでは厳しいかもしれませんがバッテリーは持ってこれると思います。」


「ホンマに大丈夫け?怪しまれへん?」


「僕は一応メンバーの一人ですから。お二人が行くよりはなんとか行くと思います。ですからここで待ってて下さい。」


笑顔で手を振りアジトに向かうレット。

心から心配する2人だが、どうする事も出来ないので見送るしか出来ない。


「………パルム…。」


「ん?なんすか?」


「タメ口でええよ。それよりも、ストレッチしとくんや。」


「………いざ、という時のため…やの。」






ギィ…

立て付けの悪いドアを開き、アジトの中に入る。

裏口から入ったので周りには誰も居ない。

確かバッテリーはここからそう遠くない部屋にあったはずだ。

足音を立てずにその部屋まで足を運ぶ。


「………あった…!」


UFOのバッテリーに手を伸ばした瞬間であった。


「随分と遅かったなぁ〜レットォ。どこで油売ってたんだぁ???あ?売っていいのはヤクだけだっつってるよなぁ?」


(………!!!ボス…!!!なんでこんなところに居るんだよ…!)


ドアの壁にもたれ、腕を組みレットを見下ろすボス。見た目からしてご立腹のようだ。

てかなんでコイツいっつも苛ついてんだ。


「お前、ヤク売ってきたのかコラオイ。金。」


「は、はい…。」


金を渡す。

帰りが遅かったのは他に客が居ないか探していたとその場の口車に合わせた。

あまり納得いっていないボスではあるものの、目をつむり背を見せた。

やっと出ていってくれるのだろうか。


「………どうやら不時着のUFOが2隻あったらしいんだけどよぉ…。なんか見たか?」


「え………今どき不時着なんて珍しいですね。そのようなものは見てません…。」


「…………。」


「お前この部屋で何してたんだ?」


「………ボスのUFOの点検…でもしようかと。ワーウルフは機械に強い種族でもあるので…。」


「……………そうか、偉いな。」


「いえ、いつもの事ですよ。」



















「お前あの2人と逃げる気かこコラオイ。」


「!!!!!!!!!」


ドカッッッ!!!


側頭部を思いっきり蹴られたレット。

勢いのまま壁まで吹き飛び叩きつけられた。

頭を押さえようとするものの、マウントを取られ両腕でボコボコに顔面を殴打される。

ボスには何もかもお見通しだった。


「せっかく!テメェを!!仲間に入れてやって!!!面倒!!!!見てやったのになぁ!!!!!」


「裏切り者は処刑あるのみじゃん?♡」


「な………なん…で…。」


「魔力2万パワー程度のゴミクズにはわかんねぇかもしんねぇけどよ、魔力使えば遠隔透視も出来るんだわ。」


「今からお前の皮剥ぐからよぉ。あ、因みに他所もんのあの2人は部下送ったから今頃モツでも抜き取られてんじゃねぇか?」


下品にゲバゲバと笑うボス。

レットは届く事もない、逃げてという思いを銀之助とパルムに送るのであった。

髪の毛を鷲掴みにされ、ホールまで連れて行かれるレット。

そこにはメンバーであった1つ目の胴体。

すぐに殺されたんだとわかった。

こういうやつなのだ。昔から何か気に入らない事があればすぐに部下を殺す。

100人以上居た部下も今じゃ20人も居ない。

考えが甘すぎた。

涙を流すと、これまた気持ち悪い顔で顔面に膝を入れるボス。

廊下と部屋にはレットの血溜まりが出来ていた。

ホールにはもう一人、髪が尖っている異星人。

手が切れ味のあるナイフのようになっており、皮を剥ぐのは確かに得意そうである。


「可哀想だね〜レットくぅん。でもさ、自分で選んだ道だもんね♡」


「親よりも先に死ぬなんてぇ〜、お・や・ふ・こ・う♡」


「おい、もういいだろ。そろそろ剥がさせてくれよ。」


「チッ、っるせぇな。少しはバラエティ覚えろやクソボケ。でもまぁ、俺に喧嘩売ってきたんだ。生きてる意味ねぇし。」


ナイフのような手が顔に近づく。

レットはガクガクと震え、涙が流れている。

腰に力が入らずもう何も出来ない。

脳裏には両親、そして先程であったパルムと銀之助。なんでこんな人生だったのだろうか。


(みんな…ごめんなさい)


「バイバ〜イ♡」


「お前がな♡」


ガシッ


「あん?」


バキィィィッッッ!!!!!!







(…………え?)


目を開けるとボスともう一人の異星人が壁にめり込んでいた。どうやら思いっきり殴られたようだ。

そう、銀之助とパルムに。


「ごめんな…遅なってもうて。」


銀之助が両手を当てるとほのかに緑色に光り、ほんの少しづつではあるがレットの傷が癒えていく。


「俺な、退役軍人なんや。まぁ、言うても衛生兵やねんけどさ。」


「俺さ、なんも覚えてないんよね。」


笑顔の二人を見て、違う意味の涙が流れる。


「……………っ痛ぇな………。」


冷静に起き上がるボス。

頭から流れる血はそのままに窓まで歩く。


「あのボケども何してやが…ん………だ。」


目を大きく見開く。

遠くに映る場所。

先程銀之助のパルムが居たその場所。

送り込んだ19人の部下が血溜まりに沈んでいた。

ただものじゃない。

しかし銀河政府や警察絡みでもない。

イライラしながらこの物語の主人公に向き直す。


「テメェ…何かしてやがったな…。何星人だボケコラァァァッッッ!!!」


「おい!!!サシン!!!あいつらの魔力測れや!!!」


髪の毛がピンピンに尖っているサシンと言うなの異星人が魔力測定機を2人に向ける。

まずは銀之助。


ピピピッ………


【1500パワー】


「フッ…」


「ダッーヒャッヒャッヒャッ!!!」


腹を抱え笑う2人。

このあまりにも低い魔力からして地球人とすぐにわかったようだ。

バカにされても顔色1つ変えない銀之助。

先程殴り飛ばされたのも不意をついたのと、紛れだろうと解釈したようだ。


「クソみたいな数値じゃねぇかよ!!!良くもまぁそんなんで恥ずかしげもなく生きてられるなぁ!?因みに俺様は20万パワーだ!!!」


「俺は若干下がるが…19万パワーだ。クヒヒッ。」


「たかが1500パワーに殴られて壁にめり込んで流血してる20万さんの方が生きてて恥ずかしいんとちゃうか?」


いちいち煽りやがる。しかしこの低数値。

もう片方の金髪が強いんだろうと高を括り測定機を向ける。


ピピピッ………


【120万パワー】


「………は?」


「どうやら俺に数値にビックリしたらしいな!」


そういう自信満々なパルムに感動を覚え目を向けるレット。

小便を漏らしながら足がガクガク震えていた。

思わずずっこけるレット。

めちゃくちゃ怖いらしい。

さっき居た場所での十数人相手も小便まみれであった。


「いや…寧ろこれはチャンスかも知れねぇ。どうせ機械の不具合だのなんだの言われるだろうが、120万のやつを殺したとなれば俺の格も上がる。だから…」 


「テメェは先に逝ねや。」


パァァァッッッン!!!!


懐からだした拳銃を銀之助に向け発砲。

思わず目を瞑るレット。


…………………


「……………まぁカスみてぇな魔力でも、【目】と【足】に集中させたらチャカぐれぇ避けれるわな。」


気に入らなさそうに拳銃の煙に息を吹きかけるボス。

銀之助は当然の如く躱していた。

こうなればこんなもん要らねぇと拳銃を投げ捨てジワジワとにじり寄る。

重火器が通用しないのであれば肉弾戦。

そっちのほうがわかりやすい、との事だろう。


「大丈夫や。もうちょい待っててな。すぐに安心させたるからよ。」 


ニカッ、と笑みを浮かべる銀之助とパルム。

そしてレットの頭をワシャワシャと優しく撫でるのであった。


「おもしれぇな地球人ってのは。勝てもしねぇ相手が目の前に居ても自分のカッコつけを優先すんのか。」


「ワーウルフの前にあの金髪を切り刻むか…。」


バッッッ!!!


一気にかけよるサシンとボス。

サシンがパルム、ボスが銀之助を狙っている。

それに対しそれぞれ構えを取る。

銀之助にボスが左手で目潰しを狙う。

それを空手の流し、続け様に左足で延髄を狙う。

だがボスも甘くない。

喧嘩なれしているのかすぐさま頭を下げ銀之助にタックルをかけた。


「グブッッッ!!!」


マウント状態に持ち込まれ、殴られる寸前。

両足をボスを首に巻きつけ足を肩に持っていき、首絞めと膝の関節を締め上げた。


「バックスターカットッッッ!!!」


いわばサブミッション。

プロレス技である。

ニヤニヤしていたボスが一気に形勢逆転。

ギリギリと確実に締められていく。

銀之助も容赦はしない。

窒息を狙っているのでない。首をへし折るつもりである。


「ガガガッッッ………!!!」


「なめとんとちゃうぞ出来損ないのてるてる坊主がよぉ!!!」


しかしその時。


「グァァァァー!!!!」


パルムの声だ。

銀之助がその方向を向くとパルムが右胸から腰にかけて切り裂かれていた。

幸い深いと言えど臓物が出るようなものではない。

心配をチャンスと伺い、緩んだ足の拘束を一気に抜けだし銀之助の背中を斬りつける。


「ガハッッッ!!!」


「相方心配してる場合かよクソ地球人!!!」


「おじさん!!!」


ボスはそのまま銀之助をアルゼンチンバックブリーカーに持っていったかと思うと、サイドロックボムを叩きつけ、顔面をモロに床板に直撃させた。


「さっきはよくもまぁやってくれたなぁ〜!!!」


腕を切断する気だ。

しかし銀之助はまだ意識はある。

確実にしとめきれなかったのがボスの運の尽き。

銀之助は床に転がっていた拳銃のケツでボスのコメカミを殴打。

溜まったもんじゃないボスはコメカミを抑える。

その瞬間、銀之助が顔面に膝蹴りを3発。

そしてチョップを鎖骨に振りかざす。

ボギャアと鳴ってはいけない音がボスに響き、思わず吐血。

そして最終フェイバリットの形に持っていく銀之助。


「や、やめろぉぉぉっっっ!!!!!」


「ブレーン……………」


「バスタァァァァァァッッッッーーーー!!!!」


ドガァァァァァァァァッッッッッッン!!!!!


これみよがしに置いていたビリヤード台の固く、鋭利な角目掛け垂直落下式ブレーンバスターが炸裂。

後頭部を大きく抉られ、背骨に衝撃が走るボス。

大量に口から唾と血が噴出。

文句無しのKO勝ちであった。

ボスの意識を確認した後、すぐにパルムを心配する銀之助。

そのパルムはというと、壁を破壊し空中に居るではないか。


「な…アイツ…パルム…!!!」


「パルムドライバァァァァァァッッッッッーーーー!!!!」


7階から瓦礫だらけの真下めがけパイルドライバー。

けたたましい轟音が走り、砂煙が立ち込めた。

次第に薄くなっていく煙。

そこに映るは、白目を向き血溜まりにホールドされていたサシンとこれまた血まみれのパルムであった。

KO勝ちである。


「すげぇなアイツ…。」


レットは後に、英雄と呼ばれるのを嫌がる2人の初勝利を目の当たりにしたと語る。

それはまさしく、生き様と姿形、全てにおいて【ロック】だったという。






その後、血まみれで白目を向いたまま危険運転でUFOを飛ばし警察に着いた。

血まみれの3人を見て警察はおっかなびっくり。

情けなくも腰を抜かした者もいた。

一応当分目は覚まさないと分かっていてもロープで縛りあげていたのでボスたちは何も出来なかったであろう。

クスリの売り場であった星は警察に認知され、すぐに摘発。宇宙ギャングも宇宙指名手配の手続きもされ一件落着であった。

レットはというと…


「………やっぱし少年院行き、なってもうたんか…。」


「はい…。しかし…おじさんたちのお陰で報酬の形を取らせて貰ったのでなんとか両親も…。」


「レットくんはなんもしてへんのにな…。」


「仕方ありません。実際に動いていたのは僕ですから。でも…本当に…なんとお二人に言えばいいか…。」


「ええんよええんよ。これも何かの縁やろう。」


涙を浮かべ何度も頭を下げるレット。

少年院を出たら必ずお礼をさせていただきますと言葉を交え、3人は熱いハグを交わした。

レットと警察を見送る2人。

パルムは信じられないが、傷が全て癒えていた。

銀之助は顔面腫れ上がっている。可哀想。


「………どうすっかな俺…。」


少しうつむき、寂しそうにつぶやくパルム。


「………………。」


「あの…さ。俺、さっき地球帰ったらやりたい事ある言うたやん?覚えてる?」


「ん?あぁ、そんなん言うてたね。」


「実はあれ、カフェ開きたくてさ。そこでなんやが…。」


「一緒に働かへんか?」


目を大きく見開くパルム。

とても輝いていた。

ええん!?と聞くが、何かの縁で出会い何かの縁でタッグマッチをした仲である。

それに初めて会った気がしない2人。

銀之助は笑顔で拳を前に突き出す。

それに拳を合わせパルムは上機嫌になるのであった。





「ん?警察のもん戻ってきたやん。どないしたんやろ。」


「すいません、先程言い忘れてたんですけど町田さんとパルムさん貴方がた免許証不所持ですよね?罰金の支払いをお願い致します。」


ズコーッ!!!


これは2人が宇宙に響かせる愛の詩を奏でるロックのお話である。



















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