14「木材加工と雑家具」

 木材は欠かせない生活資材である。


 俺は森を歩きながら、新しめの倒木をカットして収納したり、材木として利用価値の高い木には目星をつけたりしていた。

 とにかく人の手が入ったことがない自然林なので、適度な伐採は森の保全のためにも良いであろう。

 暖炉や、河原の焚き火用の薪も必要だし、木工の材料も必要だ。


 山荘前の空き地には、せっせと集めた材木が積み上がっている。


「まずは薪だ」


 木工材としては使えなさそうな木を、錬金の刃で適度な長さに切っておく。縦に並べて燃えやすいよう細く割っていく。

 いわゆる薪割りの作業だ。

 公衆浴場の燃焼装置ボイラーの修理調整仕事で、ついでに火の管理も頼まれることがある。

 つまり、俺にとっては慣れた仕事だ。


  ◆


「おーい。ぬるいぞ。もう少し強くしてくれないか」

「へーい」


 男湯、女湯には小窓があり、客はこうやって直接、釜係に火の調整を言いつけてくる。


「今日は錬金術師さんか。これからエリーゼたちが来るんだ。湯を多く用意してあげたい。水の補給も頼むぞ」

「へーい」


 この人は騎士団の怖い女騎士らしい。団の女子宿舎がこの近くにあるので、ここをよく利用している。

 団体さんがやってくると急に人が増えるので、このようなリクエストがあるのだ。


 この小窓は内側からしか開かない構造になっているので、当然のぞきなどはできない。

 もちろん俺にその気はないが。


 横長の窯の左に薪をくべて、裏手に水を汲みに行く。

 魔導ポンプを全開で動かして、タンクに水を補給した。

 俺は街の便利屋さん兼、天才錬金術師なのだ。


 しばらくして小窓が開く。


「ハルト。院長先生が、ついででいいから顔を出してくれって言ってたわ」

「へーい。いや、急ぎだな。この仕事が終わったら行ってみるよ」

「頼むわね」


 あれこれうるさく言ってくるのは、大概が女湯だ。


  ◆


「薪割りはこんなもんだろう」


 すべて山荘の裏手に運び壁沿いに積んでいく。


 次は木工だ。材料はあらかじめ水分を抜いて収納していた。

 太い木を選び、決めておいた長さにカットする。そして厚みをみながら、板と角材を作っていく。


「俺が普段使いするモンだからな。雑でいいだろう」


 素材として回収していた廃棄釘をハンマーで打ち込み、風呂で使う小さな椅子を作った。それと衣類などを置くスノコも作る。

 屋外作業用の台も作った。ダイニングの椅子を持って来て、たまには屋外で食事もいいかもしれない。

 網籠は大小様々貨物庫カーゴに収納されていた。


 それに風呂屋さんに卸した余り、ヘチマのタワシが何個かある。余ったら孤児院に持っていけばいいと、多く仕入れていたのだ。

 角材の先にそのヘチマをタコ糸でくくりつけた。これで背中もこすれる。


「さあ、俺お風呂セットの完成だ」


 雑すぎてかなり不格好だが、機能は問題ない。


「こんな生き残りサバイバル生活だし、かえって味があるってもんだな」


 と、自画自賛する。


 俺に木工のセンスは無いのだ。

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