囲暴
お間抜け
【プロローグ】
金属の脚が床をきしませ、パイプ椅子が並べられていく。
折りたたみ机の上に、盤が無造作に置かれていく。
ぬるい体育館には、汗とワックスの匂いがうっすら漂っていた。
県大会の予選――地区予選。
空気だけがやけに張りつめてる。
「よろしくお願いします」
向かいの奴が、低く頭を下げる。段位表記はなし。
(……余裕だな)
俺は葉取義景、14歳。二段。
部でもそこそこやれてるが、ここじゃ勝ち残れるかどうか。
ま、段もない相手に負ける気はしない。
先手は相手。
いくつか手を交わし、互いに盤を広げていく。
七手目、急に踏み込んできた。
――ツケ。黒石が白にぴたりとくっつく。
最近はあまり見ない形だ。
(変化球かよ)
鼻で笑いながら、打ち進める。
石の配置は雑。筋も悪い。
盤面はじわじわと俺のものになっていく。
(よし、勝った)
あとは左下の石を取れば終わり。読みも済んでる。
その瞬間――
カチリ。
完全に意識の外。そんなとこに置くか?
(……そこ? 何もないはずだろ)
脳内で形をなぞる。
読んだはずの図が、歪む。
(……あれ?)
どうなる? 取れる? 取られる?
生きる? 死ぬ? 違う?
(読みきれてなかった……?)
思考が宙を泳いだ。その瞬間。
ガン。
頭に何かがぶつかった音。
(あ……)
痛みを感じるより先に、ぐらりと視界が傾く。
白石がひとつ、ころんと転がった。
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