アサクラヒカリコから手紙が届きました

 中学校入学おめでとう。

 お母さんの腕の中でまんまるだった貴女が、制服を着て年々身長が伸びていく事に、嬉しさと同時にほんの少し寂しさも覚えてしまいます。

 お祖母ちゃんから聞きました。

 今は小説を書いてネットに投稿しているそうですね。

 しかも、なかなか好評だとか。

 貴女の物語が沢山の人を楽しませていると思うと、お母さんも鼻が高いです。

 ちょっと気が早いけれど、高校には職業訓練コースがあったよね。

 このままプロの作家を目指すのか、それとも小さい頃から好きだった宇宙を目指して宇宙飛行士になるのか、貴女の未来がとても楽しみです。

 もし宇宙飛行士を選んでくれたら、その時は最高の専門家を紹介します。

 それは勿論、私ことお母さん。そしてエナです。

 知らない人の名前が出て驚いちゃったかな。

 以前、睨まれたって書いたの覚えてますか。その人の名前だよ。

 今、私達はとても仲良し。お互い、六年前の事が嘘のようだと感じています。

 仲良くなったきっかけ。

 これはエナには口止めされているので、私が教えたとは言わないでね。

 ある日彼女が一人で泣いているのを見てしまったの。

 最初見られた事にとても怒っていたけれど、最後には床に座り込んで、子供のように泣きながら理由を話してくれました。

 エナには恋人がいたの。

 私と貴女のように地球と月で離れ離れ。

 帰ってくるのをずっと待ってくれている。そう思っていたのはエナだけだった。

 恋人はエナを捨てて男性と結婚。それを知ったのは月基地に着いてすぐ、送られてきた手紙だったそうです。

 私を無視していたのは、貴女宛に手紙を書いているところを見てしまったから。

 自分は送る相手がいなくなったのに、お前には手紙を送る家族がいる。そう大泣きしながら話してくれました。

 エナの事情を聞き、私も家族の事を話しました。

 すると、今までのわだかまりが嘘のように意気投合してしまったの。

 仕事の時は、お互い阿吽の呼吸でフォローし合って、休みの日には部屋で二人一緒に映画を観たり音楽を聴いたりゲームをして楽しんでいます。

 夜、同じベッドで寝ていると、エナは恋人を失った夢を見るようで泣いてしまう事があるの。

 そういう時は頭を撫でてあげると、彼女は健やかな寝息を立てて深い眠りにつきます。

 エナのおかげで仕事は順調に進んでおり、本部からお褒めの言葉も貰いました。

 このまま何もなければ、貴女が高校に入る直前には地球に帰れそうです。

 その時にはエナを、私の大事な人を紹介しますね。

 では今回はここまでにしておきます。

 最愛の娘へ。お母さんより。


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