第4話

 

館の中は外観同様に真っ白な壁で覆われていた。

玄関を開けてすぐに広がるホールは、相当広く学校の体育館くらいはあるだろうか。

左右には等間隔で四つずつ扉がついており、そこが僕達が宿泊する部屋の扉なのだと分かった。

ホールの中心には白くて大きな石像が建っている。

全長五メートル程はあり、大変立派な造りをしている。

何処かで見た事があるのだが、何という名前だっただろうか。

「あれは聖母マリアの石像だね。俺もこんなに大きな物は初めて見たよ」

と後ろから急に倫太郎が声をかけてくる。

僕は心の中を覗かれた様で驚き、肩をビクリとさせてしまう。

「後ろから急に声をかけないで下さいよ、吃驚しました」

「ついごめんね、以後気をつけるよ」

倫太郎にはいつも良い様にやられている気がする。

いつか僕も倫太郎の事をギャフンと言わせたい。 

ホールを抜け、のり子が一つの扉を開ける。

「ここが食堂と厨房でございます。八時、一三時、一九時の時間に食事を用意致しますので、その時間となりましたら、こちらの食堂へお集まり頂くようお願い致します。それと私の部屋は食堂の右隣にありますので、何かご用がある際はお声がけ下さいませ。食堂の左隣には洗面所がございます。男女共用となっておりますのでご理解下さい」

開かれた扉の先に現れた食堂は、思わず息を飲んでしまう程の立派な造りであった。

部屋の中心には縦長のテーブルが配置され、真っ白なテーブルクロスが敷かれている。

天井からは豪華なシャンデリアが吊るされていた。

部屋の内装に意識をむけていると、食堂の奥にもう一つ扉がある事に気づいた。

「この奥が客間となっております。そちらもご案内致します」

のり子が扉を開けると、三十畳程の部屋が姿を現した。

部屋の中心にローテーブルが置いてあり、その周りを囲むようにソファが配置されていた。

壁際には大きなテレビもあり、先ほどの食堂とは違いどこか落ち着く造りをしていた。

窓一つない部屋で、見たところこの別荘は、玄関の扉からしか出入りが出来ないみたいだ。

「皆様お気づきかもしれませんが、先程通ってきたホールに八つ扉があったかと思います。そちらが本日皆様がお休みになられるお部屋になります。掃除は済んでおりますのでご自由にお寛ぎ下さいませ。部屋には鍵がついておりますので、部屋から出る際は必ず施錠をお願い致します。後ほど鍵をお渡し致します。館内の説明は以上となります。何かご質問はございますか」

のり子の問いに誰も声はあげなかった。

「それでは皆様、ご質問がなければ只今の時刻は一三時二十分です。厨房にお食事の用意がございますので宜しければ召し上がり下さい。すぐに食堂へお運び致します」


のり子が用意してくれた食事を食べ終え、食後の珈琲を飲み一息をつく。

そんな時、杏奈が煙草を咥えている真琴先生へ問いかける。

「真琴先生は慎二さんの父親の弟なんでしょう。この別荘の存在は知らなかったの」

真琴先生は煙草のフィルターを軽く噛み、自傷気味に笑った。

「俺は家族からはあまり信用されてなかったからな。烏間家の詳しい事は殆ど知らされてないんだ。家にも殆ど帰ってないしね。だから今回のこの別荘に俺が行くってのも、兄さん達からすれば本当は嫌だと思うよ」

「何で信用されてないのかしら」

杏奈は小馬鹿にしたように含み笑う。

真琴先生は灰皿に煙草を押し付け火を消すと、視線を宙に彷徨わせる。

「まぁ色々とね。それより部屋の場所はどうしようか。特に希望がないのなら、俺は洗面所の隣の部屋でいいかな。最近夜になるとトイレが近くて」

「真琴先生も見た目は若いですけど、身体はちゃんとおじさんなんですね。俺は特に希望は無いので部屋はどこでも大丈夫ですよ」

荒井が珈琲を啜りながら、冗談混じりに笑う。

先程までの車酔いは流石に治ったらしいが、相変わらず顔色はいつも通り青白い。

部屋の場所については、他の皆も特に希望はないようだ。

「ありがとう、助かるよ。本当に歳はとりたくないものだよ」

真琴先生の部屋が決まり、その後全員の部屋が決まった。

玄関から見て左手前から黒澤、荒井、慎二、真琴。

右手前から倫太郎、僕、美波、杏奈となった。

のり子から渡された鍵には、スティック状のキーホルダーが付いており【二】と刻まれていた。

同様に振り分けられた部屋の扉にも【二】の文字が刻まれている。

部屋の扉を開き電気をつけ荷物を床に置くと、僕は自分に与えられた部屋をぐるっと一周見渡す。

この部屋にも客間同様に窓はない様で、灯りを付けなければ日中でも真っ暗である。

部屋の内装は年季は入っているが、烏間家の使用人が綺麗にしてくれた様で、ホテルにでも来たのではと勘違いしてしまう程であった。

壁掛け時計を確認すると、時刻は十四時三十分。

僕は荷物を床に放置したまま、一直線でベットへと向かう。

そのまま寝転がると、お腹が満たされた事と慣れない長旅の疲れで眠気に襲われた僕は、夢の中へと旅立った。


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