10.リリアン
「お姉ちゃん、これとこれを繋げて。」
アルドリック様がワクワクした表情で、私にマナストーンの積み木を手渡してくる。私はただ言われるがままに、二つの積み木を繋げた。
「ん〜、魔力量が多いなぁ……波長はいい感じかな……でも、ちょっと魔力が太いから……。」
アルドリック様は「これは違う」「あれはどうだ」と呟きながら、次々に別の積み木を渡してくる。そのたびに私は積み木を繋げていった。
「うん、いい感じ。それじゃ、最後にこれを繋いで。」
彼の指示通り、大きな四角い積み木を最後に繋ぐと――赤い四角の空間が積み木の上空に形成された。それは周囲を明るく照らすこともなく、熱を発することもない、不思議な現象だった。
「なるほど。火魔法が四角の空間に隔離されるのか……。」
アルドリック様は何かを理解したようで、興味深そうに赤い空間を観察している。
「アルドリック様、これはどういった現象なのですか?」
私が恐る恐る尋ねると、アルドリック様は少し考え込んだ後、説明を始めた。
「お姉ちゃんの第三魔法に火魔法を掛け合わせたら、どうなるかなって思って……。」
私は驚き、思わず息を呑んだ。第一魔法は魔力そのものを扱う基礎的な魔法。第二魔法は火・水・風・土の四大魔法で、訓練次第で誰でも習得可能。そして第三魔法は生まれ持った固有の能力。それらが掛け合わせた結果を、彼はあっさりと導き出した。
「第一魔法を積み木を介して変換して、第二魔法と第三魔法を同時に発現してるんだよ。」
彼の言葉に、私は目を見開いた。私たちが目標にしていた「第一魔法を第二魔法へ変換する方法」は既に確立されており、さらに「第一魔法から第三魔法への変換方法」まで実現してしまった。
アルドリック様は赤い空間をじっと見つめた後、魔力紙を取り出し、記録を始めた。その紙には幾何学的な図形や計算式が次々と書き込まれ、文章は共通言語、獣人語、精霊言語、古代語の四言語で記されていた。私も時間をかければ四言語で記録することは可能だが、彼のように短時間で書き上げることは到底できない。
私が視線を部屋の本棚向けると、百冊強の四言語で書かれた本や、魔導具に関する書籍がずらりと並んでいる。アルドリック様はこれらの書籍を全て理解しているのだろうか。
彼は同じ実験をグリム、フィオナ、バルドにも行い、全て記録をとっては床に置いていく。その記録をセリオス様が拾い上げ、隣でニーナ先生と共に読み始める。私は思わず疑問を抱く。
――セリオス様も、この記録が読めるの……?
「アルドリック。これは面白い結果だね。」
セリオス様は記録から何かを読み取った様子だった。アルドリック様も嬉しそうに頷く。
「だよね!僕、この人たちと研究してみたいな……。」
彼の言葉に、セリオス様は優しく微笑んで答えた。
「四人がよければ、いいよ。」
急に皆の視線がこちらに集まる。グリムとフィオナは不安そうな表情を浮かべ、バルドは興奮した様子で参加したいと訴える。アルドリック様は私に期待の眼差しを向けていた。
私は一つため息をつき、覚悟を決めた。
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