第六章『見ている誰か』

掲示板の紙は、何度はがしても、翌日には貼られていた。


**「今日も、みんな嘘をついてた」**


**「気づいてないのは、たぶん本人だけ」**


悟は、誰かが“監視している”ような感覚にとらわれ始める。


自分の生活の中の些細な嘘——

「興味ないフリをして話しかけた」

「良い人のフリをして断れなかった」

「友達のことを心の中で軽蔑していた」


それらが、紙のメッセージと重なっていく。


まるで、誰かが悟の“内面”を覗き見て書いているかのようだった。


そしてふと、思い出す。

このアパートの最上階——ほとんど人の気配を感じない、空き部屋のはずの部屋。


**“なぞの住人”が、本当に何も知らないとは言い切れない

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