第11話来訪者あり! 発動、おもしろ防衛スライム軍団!(と、やっぱり招かれざる珍客の巻)


ハナちゃん、タケオ、そしてゲンゾウ爺さんたちを乗せたヌマゴンエクスプレスがドリアンコ町へと旅立った日だった。


村の入り口、ケンジが「平和的威嚇担当」として配置した「びっくり箱スライム・どっきりパニック君(ドッキリん)」の一体が、これまでにないほどの激しい勢いで「ビヨヨヨヨ~~~~~ンンン!!!!」と作動し、けたたましい警告音(のような、なんとも表現し難い奇声)を発したのだ!


その音を合図に、村中に配置された他のドッキリんたちも連鎖するように「ワッショイ!」「へにょへにょ~ん!」「デロデロ~!」と一斉に飛び出し、ピカリンちゃんが警戒色の赤いサーチライトを点滅させ、モチボン(捕獲用粘着ネットスライム)たちが発射準備に入る!


「な、何事だ!?」


ケンジは、スライムワークスで新しい枕の綿詰め(もこたんの繊維を、パッくん製枕カバーに詰める作業)をしていた手を止め、飛び出した。


それに続いてサブローも慌ててスライム警棒(ヌマゴン特製・マッサージ機能付き)を手に駆けつける。


ポチ子はケンジの肩に飛び乗り「ぷるる!(臨戦態勢!)」と勇ましく震え、ヌマゴンは近くにあった丸太を軽々と持ち上げ、即席のバリケードを形成した。


村人たちは、以前ケンジと決めておいた避難経路を使い、子供や老人から順に、村の奥の広場(ヌマゴンが作った頑丈なシェルター機能付き集会所)へと避難を開始。


その動きは、訓練の成果か、意外なほど冷静でスムーズだった。


ケンジとサブローは、ヌマゴンバリケードの影から、村の入り口の様子を恐る恐る伺う。


そこには、無数に(といっても十数匹だが)飛び跳ね、奇声を上げ、キラキラした無害なパウダーを撒き散らすドッキリんたちの歓迎(という名の全力威嚇)を受け、右往左往している見慣れた…いや、見慣れすぎてもはや食傷気味の一団の姿があった。


そう、勇者バーンナックル・ゴリマッチョ一行である。


「ええい!何だこのふざけた魔物は!聖剣『ブッ叩き丸』の錆となれぃ!」


勇者バーンナックルが、一番近くで「ビヨヨヨ~ン!」と挑発的に揺れていたドッキリん(ケンジが「お調子者一号」と名付けたお気に入りの個体)に斬りかかった瞬間!


「ブシュッ!!!」


お調子者一号の頭部(と思われる部分)から、目の覚めるような鮮やかなエメラルドグリーンの、そして半径五メートル以内の生物を確実にノックアウトするほどの強烈な「超くっさいけど健康には全く影響ないスライム粘液(熟成させた古代魚の肝と、七日漬け込んだ薬草をブレンドした特製品、ケンジ曰く『究極の平和的生物兵器』)」が、勇者様の顔面に見事クリーンヒット!


「ぐほぉっ!?な、なんだこの、魂まで腐りそうな臭いはー!?目があああ、鼻があああ、尊厳がああああ!」


勇者様は顔面を緑の粘液まみれにしながら、その場で目を押さえ、鼻を塞ぎ、なぜか尊厳まで気にしつつ、のたうち回る。


その姿は、もはや公害レベルの異臭を放つ、ただの緑色の物体だった。


一方、魔法使いインテリオは、この混乱に乗じて「こ、これは…未知の錬金術素材の匂い…!?(大嘘)もしかしたら、あのスライム使いの秘密に繋がる手がかりが…!」と、地面に飛び散った粘液をこっそり採取しようと手を伸ばした。


だがしかし、その卑しい動きを上空から冷徹に監視していたピジョンポッポ君(伝書スライム・改。最近、ケンジによって小型防犯カメラ機能と、証拠隠滅阻止機能が追加搭載された)が音もなく急降下!


インテリオが粘液(ただの臭い塊)をハンカチで包もうとした瞬間、そのハンカチごと彼の貧相なメモ帳を華麗にひったくり、代わりに一枚の大きな葉っぱ(ポチ子の肉球スタンプが力強く押され、「人の物を盗むのは、ブリブリスライム以下です。猛省してください。ケンジ」と書かれている)を顔面に叩きつけて飛び去った。


インテリオは、葉っぱまみれになりながら放心状態で固まっている。


そして、マッスルンダー(いつの間にかピヨちゃんと共にパーティーに復帰を果たしていた。ピヨちゃんは勇者様の異臭に驚いてマッスルンダーの頭の上で気絶している)は、派手に暴れる勇者様を助けようとして、うっかりモチボン(捕獲用粘着ネットスライム)が仕掛けた最新作「超強力粘着・五体満足でも絶対動けないスパイダーネット(ただし見た目は可愛いレース編み風)」に全身を絡め取られ、巨大なレース編みのミノムシのような姿で宙吊りになってしまった。


「ウスー!?コンドハ!テンジョウカラ!ネバネバー!」


そこへ、ケンジが大きなため息と共に(そして強烈な異臭に顔をしかめながら)登場。


「勇者様ご一行でしたか。また一段と…香ばしいことになられましたねぇ」


緑の粘液と涙と鼻水でぐちゃぐちゃの勇者様、葉っぱのメッセージを手に呆然とするインテリオ、そしてレース編みミノムシ状態のマッスルンダー。


その有様は、もはや言葉にするのもおぞましい、悲劇と喜劇のミルフィーユだった。


サブロー率いる村の青年警備隊(スライム警棒を構え、ドッキリんたちを背後に従えている)が、勇者一行のあまりの惨状と異臭に一瞬たじろぐも、ケンジの指示で「お客様(大迷惑)」として丁重に(物理的に拘束しつつ)広場へとご案内した。


そのモチボンの粘着ネットは、せせらぎちゃんが緊急生成した「ドリアン臭も消し飛ぶ!超消臭分解ウォーター(ミントとレモングラスとその他色々配合)」で洗い流されたが、マッスルンダーの筋肉と勇者様の鎧には、なぜか数日間取れない甘ったるいベリーの香りと、微細なキラキラパウダー(ドッキリんの置き土産)がびっしりと付着してしまった。


広場に通された一行は、カゲウス村の驚くべき発展ぶりに(今度こそちゃんと)目を見張るが、それ以上に自分たちの置かれた状況と、村人たちの「うわぁ…」という憐れみと「また来たの?」という諦観と「ちょっと面白い」という好奇の入り混じった視線に、顔から火が出る思いだった。


そこで振る舞われた食事は、村人たちが普段のおやつにしている「モグモグ番長特製・超すっぱいけど元気が出る干し梅(の出来損ない)」と、せせらぎちゃんが生成した「ただの水(ただし勇者様には泥水に見える呪い付き、というせせらぎちゃんのささやかなおふざけ)」だった。


勇者様は「う、うまい…!これが真の勇者に与えられる試練の味か…!」と涙ながらに(すっぱさと泥水の味で)干し梅をかじり、泥水を飲むが、インテリオはすっぱさに顔を歪め、マッスルンダーは「ウス!スッパイ!でもウマイ!」と元気に完食していた。


そんな騒動の最中、ケンジの肩に、もう一羽のピジョンポッポ君(ドリアンコ町との定期連絡便担当)が舞い降りた。


彼が運んできたのは、ハナちゃんからのメッセージが書かれた小さな防水加工済みの葉っぱ。


「お店の準備、順調に進んでるよ!オルコット町長もすごく協力的!でもね、最近ドリアンコ町で『カゲウスの秘宝』とか『スライム使いの奥義』とか、変な噂を流して情報を集めようとしてる怪しい商人や、チンピラみたいなのが増えてきてるんだ。こっちでも気をつけてるけど、村の方も油断しないでね!」


そのメッセージは、ケンジに村の防衛強化と情報管理の重要性を改めて認識させた。


食事(という名の試練)を終え、多少なりとも体の自由を取り戻した(しかし尊厳は地に落ちた)勇者一行。


もはやこの村で英雄的行為(という名のさらなる醜態の露呈)をする気力も失せたのか、またピヨちゃんがドッキリんたちの放つ「ゆるふわオーラ」を極度に怖がり始めたため、「き、貴様らの村の発展、この勇者バーンナックル・ゴリマッチョが、しかと天に報告しておいてやるぞ!(意味不明)」と、捨て台詞だけは勇ましく、しかし足早にカゲウス村を後にして行った。


その際、勇者様の鎧から漂う甘酸っぱいベリーとドリアンの香りが、カゲウス村に新たな「名物臭」として語り継がれることになるとは、まだ誰も知らない。


「スライム警備システム、予想外の…いや、ある意味予想通りの相手に、絶大な効果を発揮しちゃったみたいだね…」


ケンジは、遠ざかる勇者一行の(様々な香りがミックスされた)後ろ姿を見送りながら、深いため息と苦笑いを浮かべるしかなかった。村人たちは、その一部始終を固唾をのんで見守っていたが、一行が完全に視界から消えた瞬間、こらえきれずに大爆笑したという。


しかし、ハナちゃんからの知らせは、ケンジの心に新たな決意を灯していた。


「ぷるるん清水」や「雲の上おやすみピロー」の評判が広まれば広まるほど、カゲウス村のユニークな生産方法や、スライムたちの秘密を守る必要性が高まる。ただ追い払うだけではダメだ。悪意ある者たちから、この村と、大切なスライムたちを、そして村人たちの笑顔を、断固として守り抜かなければ。


(ただ守るだけじゃなく、僕たちの村とスライムたちの素晴らしさを、正しく理解してもらう努力も必要なのかな…でも、どうしても話の通じない相手には…やっぱり、もっとすごいスライムの力が必要だよね!)


ケンジは、腕にそっと止まったピジョンポッポ君を優しく撫でた。


その頭の中では、すでに新たなスライムの進化プランと、カゲウス村の未来を守るための、壮大で、ちょっぴりユーモラスな防衛計画が、次々と芽生え始めていた。


夕焼け空の下、ケンジの決意を、スライムたちがそれぞれのやり方で応援するように、優しく、そして力強く輝いていた。

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