繫盛亭なかよし怪談夜話(こわくない怪談)

稲富良次

第1話  教会の横の文化住宅の二階に住んでいた時の話


「エー人間の五感で最後に残るのは聴覚ともうします。

ですがね嗅覚というのも、これはまた強烈に記憶に残るものでございます。

「この話は私の実話でして

かれこれ30年前、弟といっしょに文化住宅の二階に住んでおりました。

階段を上がって二階のドン付き、窓が西にありまして夕方は西日が入り

たいへん夏場は暑かった。

そんな蒸し暑い夏の午後…


「わたくしシャツとパンツいっちょで昼寝をしておりました。

貧乏ぐらしでございます。

クーラーなんてものはございません。

扇風機も壊れておりました。

そんなもんですから西向きの窓を全開であけておりました。


というわけですから寝苦しい。

それでも疲れている。

うつらうつら

寝るともなし

起きるともなし…


ほどなくして顔がムズムズする

その刹那

スバァ、スバァ、スバァ

私の顔面から何か出てきた。

顔に肛門がついているんだか知らないが3つ固形物が出てきた。

ビックリして声もあげられませんでしたか…


「ありゃ犬か…」

薄目をあけてみておりますと

黒い犬が三匹

部屋をうろついております。


見るとはなしに見ておりますと。細長い鼻ずら、長い手足、黒い胴体

「グレイハウンドか…」

そいつが口からよだれをたらし、台所にいったり、弟の部屋にいったり

それは恐ろしい気配でございます。



「まずいまずいぞ、もしおれが起きていると 気がつかれたりしたら

あの鋭いキバで生きたまま食い殺されるにちがいない…


まんじりともできません。

動いたら負けでございます。


そのうち自分をまたいで「フンフンフン」と鼻をすする音

ですがこうなったらガマンくらべでございます。


と三分もすぎましたか

突然

一匹目が私の顔めがけてズブスブスブとダイブ

二匹目もズブズブスブ

三匹目も勢いよくスブスブスブ


わたしの鼻に「犬のクソの臭いが

プーンと

ほのかに…

あれは忘れられるもんじゃございません。


「ティンダロスの猟犬」というお話でございました。

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